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2023 年度 実施状況報告書

新規フェロトーシス抑制因子CNDP2によるシステイン再利用系の生理機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K11850
研究機関山形大学

研究代表者

小林 翔  山形大学, 農学部, 准教授 (10779490)

研究分担者 佐藤 英世  新潟大学, 医歯学系, 教授 (60235380)
塩野 義人  山形大学, 農学部, 教授 (80361278)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードグルタチオン代謝 / システイン供給 / 脂溶性抗酸化能 / フェロトーシス
研究実績の概要

細胞内の主要な抗酸化物質であるグルタチオンの枯渇が引き金になり、鉄イオン依存性細胞死(フェロトーシス)が誘導される。本研究では、申請者らがフェロトーシス抑制遺伝子として同定したCNDP2の生体内での生理機能の解明を目指した研究を行っている。
CNDP2はグルタチオン分解により細胞内のシステイン再利用系として機能することが予想されるため、本機能の解析のためにゲノム編集によりCNDP2を欠損するマウス肝臓がん細胞由来細胞株Hepa1-6の作成に取り組んだ。Cas9を安定的に発現するHepa1-6細胞に対して、CNDP2のエキソン1部位を認識するガイドRNAと共にブラストサイジン耐性遺伝子を導入し、ブラストサイジン耐性細胞を選抜した。ウエスタンブロット解析の結果、CNDP2の完全な欠損を認めた。さらに、非特異的な配列を導入したコントロール細胞(Scr cells)はシスチン欠乏によるフェロトーシスがGSH添加により救済されるのに対して、樹立したCNDP2欠損細胞(CNDP2 KO cells)はシスチン欠乏下でのGSH添加に対しては救済されないことがわかり、予想通り、CNDP2はグルタチオン分解によるシステイン再利用系として機能することが示唆された。現在、作成した細胞の表現型を詳細に検討中である。
食品由来のフェロトーシスを抑制する化合物の探索のため、シスチン輸送体xCTを欠損する細胞を用いて、昨年度に加えてさらに10種類上の食品抽出物を加え、計30種類以上の食品抽出物のスクリーニングを実施した。その結果、ネギ属の野菜やパプリカ、カリフラワーなどにフェロトーシス抑制効果が見出された。今後、これらの食品抽出物とCNDP2や細胞内レドックス関連遺伝子との関連について解析し、フェロトーシス抑制メカニズムの解明を目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ゲノム編集でのCNDP2欠損培養細胞株の作製と個体での病態モデルの検討に時間を要しているため、やや遅れていると判断した。
令和5年度は、国際共同研究の実施により、Cas9を安定的に発現するマウス肝臓がん細胞株Hepa1-6を用いて、CNDP2のガイドRNAを導入することで、CNDP2欠損細胞を作出することに成功したが、その作成に時間を要してしまい、その表現型の詳細な解析までは至らなかったが、今年度で詳細な解析を進める予定である。
令和5年度に山形大学医学部メディカルサイエンス推進研究所動物実験センターに助力を仰ぎ、腎臓摘出の手法を習得しているため、令和6年度に腎臓摘出による腎障害モデルでの検討を進める予定である。

今後の研究の推進方策

申請者は研究代表者として研究全般を実施し、研究分担者の佐藤(新潟大学)はアミノ酸代謝に関わる細胞解析と研究計画等への助言を行い、同じく塩野(山形大学)は微生物抽出物からの化合物の単離、精製ならびに化学構造の解析を実施する。
(1)CNDP2遺伝子欠損マウス由来細胞やゲノム編集によりCNDP2を欠損させた細胞を用いて、生化学的解析により、フェロトーシスへの感受性やフェロトーシス関連遺伝子との関係を解析する。
(2)山形大学創薬研究拠点が所有する化合物ライブラリーと研究分担者の塩野の所有する微生物抽出物または様々な食品抽出物を用いて、CNDP2を特異的に阻害する化合物の探索を行う。また、これまでの検討によって、いくつかの食品抽出物がフェロトーシスを抑制する効果が見いだされたため、上記(1)で作製したCNDP2欠損細胞などを用いて、フェロトーシス抑制効果とCNDP2との関係を明らかにする。
(3)腎臓摘出により腎障害が重度になると予想されるCNDP2欠損マウスにおいて、腎機能マーカーの血中尿素窒素(BUN)やクレアチニンの測定と組織学的解析を行う。
(4)脳におけるCNDP2の機能解析のため、ステップスルー法による学習習得・記憶保持機能の検討と共に脳の組織学・生化学解析と遺伝子発現解析を行い、CNDP2と脳機能との関係を明らかにする。
研究成果を発表し、最先端の情報を収集するために、日本生化学会大会(2024年11月6日-8日、横浜)に参加を予定している。また、3年間の研究成果を論文として発表する予定である。

次年度使用額が生じた理由

ほぼ計画通りに予算を執行したが、若干の次年度使用額が生じた。
次年度では物品費の一部として利用する予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] Helmholtz Munich/Institute or Metabolism and Cell Death(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Helmholtz Munich/Institute or Metabolism and Cell Death
  • [雑誌論文] Effect of dietary L-theanine on protein expression in the hippocampus of senescence-accelerated mice (SAMP8)2024

    • 著者名/発表者名
      Kiharu Igarashi, Sho Kobayashi, Yasushi Mori, Makiko Takagi, Yoichi Fukushima
    • 雑誌名

      Journal of Nutritional Science and Vitaminology

      巻: - ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Green cocoon-derived sericin reduces cellular damage caused by radiation in human keratinocytes2024

    • 著者名/発表者名
      Kakihara Nahoko、Sato Momoko、Shirai Ayaki、Koguchi Mizuki、Yamauchi Shiori、Nakano Toshimichi、Sasamoto Ryuta、Sato Hideyo
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 14 ページ: 368(11pages)

    • DOI

      10.1038/s41598-024-53712-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Sulfur metabolic response in macrophage limits excessive inflammatory response by creating a negative feedback loop2023

    • 著者名/発表者名
      Takeda Haruna、Murakami Shohei、Liu Zun、Sawa Tomohiro、Takahashi Masatomo、Izumi Yoshihiro、Bamba Takeshi、Sato Hideyo、Akaike Takaaki、Sekine Hiroki、Motohashi Hozumi
    • 雑誌名

      Redox Biology

      巻: 65 ページ: 102834~102834

    • DOI

      10.1016/j.redox.2023.102834

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 細胞内グルタチオン・レドックス系に影響を与える食品由来成分の探索2023

    • 著者名/発表者名
      小林翔
    • 学会等名
      2023年日本農芸化学会東北支部シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] A search for ingredients that inhibit ferroptosis from foods.2023

    • 著者名/発表者名
      Sho Kobayashi, Tsukumo Abe, Yasushi Mori, Naomi Abe-Kanoh, Kiharu Igarashi, Hideyo Sato
    • 学会等名
      EMBO Workshop Ferroptosis: When Metabolism meets cell death.
    • 国際学会
  • [学会発表] xCT遺伝子欠損胚性線維芽細胞の生存を可能にする食品由来成分の探索2023

    • 著者名/発表者名
      小林翔、阿部槻盛、森靖、柾谷菜弥、五十嵐喜治、佐藤英世
    • 学会等名
      第96回日本生化学会大会
  • [学会発表] 黄柏抽出物はシスチン欠乏条件下の培養によるフェロトーシスを抑制する2023

    • 著者名/発表者名
      森靖、五十嵐喜治、叶奈緒美、小林翔
    • 学会等名
      第96回日本生化学会大会
  • [学会発表] マウス胚性線維芽細胞においてフェロトーシスを抑制するフラボノイドの構造相関2023

    • 著者名/発表者名
      佐藤萌々子、鹿又えみり、加藤成祥、白井綾樹、柿原奈保子、佐藤茉美、佐藤英世
    • 学会等名
      第96回日本生化学会大会
  • [学会発表] 活性化マクロファージはポリスルフィド産生を介して過剰な炎症応答を負に制御する2023

    • 著者名/発表者名
      武田遥奈、村上昌平、高橋政友、和泉自泰、馬場健史、佐藤英世、赤池孝章、関根弘樹、本橋ほづみ
    • 学会等名
      第96回日本生化学会大会
  • [学会発表] 炎症性腸疾患モデルでのxCT阻害による抗炎症作用2023

    • 著者名/発表者名
      岩城英也、関根弘樹、村上昌平、加藤伸史、北村大志、魏笵研、佐藤英世、福田真嗣、曽我朋義、角田洋一、正宗淳、本橋ほづみ
    • 学会等名
      第96回日本生化学会大会
  • [備考] 山形大学 研究者情報

    • URL

      https://yudb.kj.yamagata-u.ac.jp/search?m=home&l=ja

  • [備考] reseearchmap

    • URL

      https://researchmap.jp/-sk

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公開日: 2024-12-25  

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