研究課題/領域番号 |
22K11857
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
武田 晴治 北海道科学大学, 薬学部, 教授 (80374726)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 組み換え受容体 / 低比重リポタンパク質 / 親和性 / バイオレイヤー干渉法 |
研究実績の概要 |
市販の血清(健常者)からLDLを、超遠心により分画した. LDLは mLDL(TBARS 約1.5nmol/apoB-100 mg)とoxLDL (TBARS 約12 nmol/apoB-100 mg)を作製した。oxLDLはlag phase後の酸化初期状態のLDLであった。 組み換え各受容体のLDLや変性LDLへの親和性については情報が少ないため、組み換えLDL受容体(ReLDL)、組み換えCD36(ReCD36)、組み換えLOX-1受容体(ReLOX-1)の、mLDLまたはoxLDLへの結合能を、Biolayer Interferometry法により解析した. その結果、reLDL受容体の場合、mLDLに対する結合量はoxLDLに対する結合量に対して3.5倍程度増加した。また、oxLDLに対しても結合を示した。reCD36はmLDLにはほとんど結合せず、oxLDLに対しては結合を示した。reLOX-1に関しては、結合量はoxLDL>mLDLであったが、それらの吸着量は、reLDL、reCD36と比較すると3分の一程度であった。そこで、Hisタグを強く結合するTRIS-NTAを用いてBLIセンサーによりreLOX-1を固定化した。その結果、reLOX-1およびoxLDLの吸着量を4倍程度増加させることができ、また、洗浄による解離も改善した。次に各組み換え受容体のLDL認識の重なりを検討した。 各組み換え受容体を固定化した樹脂を作製し、mLDLまたはoxLDLを樹脂に添加してインキュベートさせた。その溶液を、金基板上に組み換え受容体を固定化した基板に添加して、洗浄後、固定化されたLDLの数をAFMによりカウントした。その結果、reLDLは一部のoxLDLを結合する可能性があること、reCD36とreLOX-1では認識するoxLDLに差がある可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画では、各受容体のmLDLおよびoxLDLへの結合を評価することと、各受容体で認識されるLDLに重なりがあるかどうかを検討することを予定していた。本年度、reLOX-1はreLDLR、reCD36とLDLの認識に対して重なりが少ないこと、reLDLRは一部のoxLDLに対して親和性があることを示す結果が得られた。一部のデータで2023年度に再現性の確認が必要であるが、ほぼ、予定していた内容を実施しているため、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
AFMのより、各組み換え受容体に結合するリポタンパク質の硬さと形状の測定を実施する予定である。まず、Au/mica基板を作製しAu/mica基板にストレプトアビジンを物理的に吸着させ、次にTris-NTA-biotinを固定化する. 各種受容体をTris-NTAを介して固定化させる. LDLを基板に乗せて、吸着した個々のLDLの形状のイメージと硬さのイメージを同時に測定する予定である。 各受容体に吸着したLDLの形状と硬さのマップから、善玉と悪玉LDLの形状(主に高さ)と硬さについて関連性があるかについて検討する予定である。 また、TRIS-NTAの分子間距離を変化させたSAM膜により、各種受容体固定化の密度もおよびその状態をAFMなどで検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
装置のオペレートをサポートする補助員(20万円)を予定したが、基板に固定する分子の化学合成の必要性が発生したため、補助員に依頼する部分を申請者が実施した。そのため、研究予定の一部が遅れており、約14万円の未使用が発生した。2023年度にデータの再現性(一部の遅れ)をとる必要がある。2023度に再現性のためのBLI素子購入と合成するための試薬の購入に使用する予定である。
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