研究課題/領域番号 |
22K11857
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研究機関 | 北海道科学大学 |
研究代表者 |
武田 晴治 北海道科学大学, 薬学部, 教授 (80374726)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 低比重リポタンパク質 / 原子間力顕微鏡 |
研究実績の概要 |
2022年度、BLI法により組み換えLDL関連受容体の活性について評価した。本年度はそれら受容体に認識されるLDLの性質についてAFMにより検討した。LDLは市販の血清(健常者)、超遠心により分画した。 LDLはTBARSが1.2~3.1 nmol/mg(apoB-100)のものを用いた。ヒスタグ導入した組み換えLDL受容体(ReLDLR)、CD36(ReCD36)、LOX-1受容体(ReLOX-1)の三種類を金/マイカ基板上の自己組織化膜にヒスタグを介して固定化し、サンプル基板とした。 サンプル基板またはAPS修飾マイカ基板上に0.05mg/mlのLDLを添加して10分間室温放置した。リン酸緩衝溶液で洗浄後、AFMにより、フォースカーブの連続測定で試料の凹凸と硬さに関するマップをヘルツモデルにより求めた。 最初に各種組み換え受容体の高さ像を観察すると約6nm以下であった。また、APS修飾基板にLDLを非特異的に吸着させると約8~16nm(中央値 約12nm)の高さのLDLと考えられる粒子が多数観察された。そこで、LDLを添加後、8nm以上12nm未満(S領域)、12nm以上16nm未満(M領域)、16nm以上(L領域)の三区分に部類して硬さの分布を調べた。その結果、ReLDLRではS領域では5~20MPa、M領域では3~15MPa、L領域では3~10MPaに多くの粒子が観察され、ReLOX-1に吸着し観察された粒子はReLDLRの場合と似ていたが、ReLDLRの場合と比較するとS領域で5MPa以下と20MPa以上の粒子が多く観察され、L領域で、20nm以上で5MPa以下の粒子が多く観察された。CD36の場合、S領域では2~15MPa、M領域では3~10MPa、L領域では1~5MPaに多くの粒子が観察され、全体的にソフトな粒子となる傾向が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はAFMにより組み換えLDL関連受容体に吸着するLDLの高さと硬さに関する情報を得るための条件を検討することが目的であった。ReLOX-1とReLDLRに吸着したLDL特性分布の差は少なかったが、S領域およびL領域で差がある傾向があり、CD36もS領域で明らかに分布が異なっていた。今後、これらの領域に注目して次年度、詳細に検討する目安がついた。受容体間の距離がLDL粒子結合量などに与える影響については検討できていないが、分類方法および観察すべき領域に目安がついたことにより、やや遅れている状態であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、2023年度に得られた結果の再現性の確認をする。また、LDLR、reLOX-1、reCD36に吸着したLDLは、S領域において認識が異なる傾向が示された。S領域は冠動脈疾患進展リスクの高いLDLとして知られている小型LDLが含まれている可能性があり、超遠心法において小型LDLのみを分画してそれぞれの組み換え受容体へ結合および硬さなどの特性をAFMにより検討する予定である。また、受容体の密度を変更した場合、LDLの認識に変化がおこるかどうかについても検討する予定である。最終的に高さと硬さの情報を元に、どのような硬さと高さをもつLDLがそれぞれの組み換え受容体に認知されるのかについてまとめる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に予定されていた研究の一部(受容体の固定化密度)を、本年度に実施する予定である。その研究で使用する予定の試薬費用などが使用計画とズレとなったため、2024年度で執行する予定である。
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