研究課題/領域番号 |
22K11872
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
柳井 修一 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (60469070)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 軽度認知障害 / CAMPシグナル伝達系 / 老化 / 認知機能 / 歩行機能 / シロスタゾール |
研究実績の概要 |
本研究では「軽度認知障害(以下MCI)におけるcAMP-cAMP依存性キナーゼ-CREBシグナル伝達系(以下cAMPシグナル伝達系)の機能改善が認知機能、並びに認知機能と密接な関係にある歩行機能を改善する」という仮説を検証するための基礎研究を行う。MCIのモデルマウスとして、ヒトで認められるcAMPシグナル伝達系の年齢依存的機能低下を加速度的に再現するICER (inducible cAMP early repressor) 過剰発現マウス(以下ICER-OEマウス)を作出した。 令和4年度は、3ヶ月齢のICER-OEマウスと同腹統制群の行動解析を終えた。行動評価には、ホームケージ内活動量やオープンフィールドなどの一般行動解析、またモリス水迷路課題や恐怖条件づけ課題などの学習課題を組み合わせた行動テストバッテリーを構築した。ICER-OEマウスと統制群の一般行動及び学習成績は同程度であり、遺伝子改変の効果は認められなかった。また、少数の被験体群を用いて6ヶ月齢の行動解析を行ったところ、統計的有意差はなかったものの、水迷路課題においてICER-OEマウスの成績が悪い傾向が認められた。次年度以降に予定している投薬実験を行う際、自然交配では実験に必要な匹数を一度に得ることが困難であると考えられたため、体外受精による胚凍結を行った。 本年度の成果はcAMP系の機能低下と老化が相乗的にMCIを誘発することを示唆しており、cAMPシグナル伝達系の年齢依存的機能低下を加速するモデルマウスの一般行動に関する貴重なデータである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で用いるICER-OEマウスについて、遺伝子型の判定プロトコルを確立した。また、野生型C57BL/6Jマウスを用いて申請者が構築した行動テストバッテリーがICER-OEマウスの行動評価にも適用可能なことを明らかにし、3ヶ月齢のICER-OEマウスの行動学的基礎データを取得した。自然交配では実験に必要な匹数を一度に得ることが困難であると考えられたため、行動解析と並行して体外受精による胚凍結を行った。次回の実験に使用する動物は凍結胚からの個体化を終えており、現在老化育成中である。 高頻度でデータ取得可能なランニングホイールは開発を終えていたが、半導体不足の影響を受け、研究遂行に必要な台数を製作することができなかった。ランニングホイールの部品を入手する見込みが立たなかったことから、製作業者と協議のうえ、仕様を一部変更して再開発を進めている。 以上の進捗状況から、やや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
cAMP系の機能低下と老化が相乗的にMCIを誘発するという仮説を検証する。少数の被験体群を用いて予備的に取得したデータから、6ヶ月齢のICER-OEマウスで行動学的な機能低下が認められ可能性が示唆された。この知見を踏まえ、統計学的に十分な頭数の6ヶ月齢ICER-OEマウスを用いて薬物非投与下における基礎データの収集を行う。6ヶ月齢で行動学的な機能低下が認められない場合は、12ヶ月齢を目安として行動学的データの取得を行う。ICER-OEマウスは自然交配により得られる産仔数が野生型と比べて少ないことが判明した。そのため、今後使用する実験群の作出は体外受精により行うこととして、体外受精による胚凍結を進める。 半導体不足の影響を受けて仕様変更を余儀なくされたランニングホイールは、仕様を早急に定めた後にプロトタイプを作製、feasibility testを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の研究費の大半はランニングホイールの製作費用に充当する予定であったが、半導体不足の影響を受けて製作することができなかったため。
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