研究課題/領域番号 |
22K11877
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
菊崎 泰枝 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (60291598)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ヒスタミン食中毒抑止 / モルガン菌 / 抗菌活性 / クローブ / メドウスウィート / フラボノイド |
研究実績の概要 |
毎年のように給食施設等で発生しているヒスタミン食中毒は、食品中のヒスチジンが食品付着菌由来のヒスチジン脱炭酸酵素の作用によりヒスタミンに変換され蓄積することが原因で発生する。ヒスタミンは熱に安定で加熱調理によって防ぐことができないため、食品の流通・保蔵段階でヒスタミンの蓄積を阻止することが肝要である。本研究は、長年食習慣のある安全な食用植物からヒスタミン蓄積阻止成分を探索し化学構造とその機能を解明することを目的としている。これまでにバラ科メドウスウィートおよびフトモモ科クローブの70%アセトン抽出物酢酸エチル可溶部にヒスタミン生成菌のモルガン菌に対する抗菌活性を認め、抗菌活性成分の探索を行った結果タンニン類が活性成分であることを見出したが、タンニン画分以外にも抗菌活性を示す画分が存在していた。本年度は、メドウスウィート、クローブからタンニン以外の抗菌活性成分を探索する目的で各酢酸エチル可溶部の精製を進め、数種のフラボノイドを単離、構造決定した。また、本研究では、単離化合物のヒスタミン蓄積抑制活性を評価するために、少量の被験試料でも抗菌活性とヒスタミン生成量を測定できる試験法の構築を目指している。本年度は、モルガン菌の培養条件、ヒスチジンの添加濃度等の条件検討を行い、ヒスタミンが確実かつ安定的に生成する条件を確立した。抗菌活性を濁度法、ヒスタミン定量を比色法と蛍光検出HPLC法の両方で検討した。比色法では測定に用いる酵素ヒスタミンデヒドロゲナーゼに被験試料が濃度依存的に影響を与えるため定量的評価には適さないことがわかった。しかしながら、比色法は簡便であるため被験試料の添加濃度を考慮した定性的評価は可能と考え、ヒスタミン産生抑制の有無を調べるスクリーニングに活用できると考えている。一方、単離化合物の評価をする際には定量性の優れているHPLC法が適していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度、メドウスウィート、クローブのタンニン画分以外の抗菌活性画分の精製を進め、含有成分の単離・構造決定を行ったが、主成分以外の成分の単離・構造決定まで完了することができなかった。活性画分の主要成分はフラボノイドであることがわかったが、フラボノイドのモルガン菌に対する抗菌性に関する知見は少ないため、化学構造の類似したフラボノイドの抗菌性を調べることは有意義と考えている。本年度中にフラボノイド画分の精製を大部分終える計画であったが、まだ精製の余地があることを考えると進行がやや遅れていると言わざるを得ない。また、本研究のもう一つの課題である「少量の試験試料で魚肉中ヒスタミン蓄積抑制効果を測定できる試験法の確立」については、培養条件は確定したものの、基質であるヒスチジンの添加量によって、被験物質のモルガン菌に対するMICが大きく異なるという結果となった。その原因がヒスチジン添加の有無にあるのか、抗菌活性測定法にあるのか等明らかとなっていないため、今後本法を利用してのヒスタミン蓄積抑制を評価するには、引き続き再現性実験を含めてさらなる検討が必要となった。したがって、全体の進捗としてはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
メドウスウィート、クローブの抗菌活性画分からひきつづき成分の単離・構造解析を進める。また、メドウスウィートやクローブと同様、サバ筋肉中のヒスタミン蓄積抑制効果が認められているローズレッドペタル、オールスパイス成分の抽出・分画・精製も順次進める。得られた単離化合物について、まずヒスチジン脱炭酸酵素阻害活性を調べ、化学構造と活性の関連性を明らかにする。また、本研究では、サバ筋肉を利用する試験では試験試料が多く必要となり単離化合物の試験には不向きであることから、少量の試料でヒスタミン蓄積抑制効果を調べるモデル実験法を構築することも課題として挙げている。今年度の研究でヒスタミン定量法の目途がついたが、ヒスチジン添加濃度により試験試料の活性に差がでた原因を明らかにし、最終年度に単離化合物の活性評価を確立した評価法で実施すべく、測定法の妥当性を引き続き検討する。測定法が確立できれば、単離化合物の抗菌性とヒスタミン生成抑制を同時に評価し、化学構造と活性の関連性を考察するとともに、サバ筋肉中のヒスタミン蓄積抑制効果がヒスチジン脱炭酸酵素阻害とヒスタミン生成菌に対する抗菌性のいずれに起因しているのか、あるいは両方に起因しているのかについて明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、少量の試料でヒスタミン蓄積抑制効果を調べるモデル実験法の構築にあたって、HPLC法を導入した。HPLC法ではヒスタミンの検出に蛍光検出器が有効であることから、本年度備品費として計上していた蛍光検出器を購入して既存のHPLC装置に連結して使用した。それ以外の消耗品についてはこれまでに購入していた器具、試薬類で賄えたので、その分、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、ヒスタミン比色定量に用いる測定用キット、HPLC法に用いるカラムや試薬類、抗菌活性測定や成分の抽出・分画・精製・単離および構造解析必要な試薬および器具類等に使用する予定である。
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