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2022 年度 実施状況報告書

脂肪酸補充を基盤とした新規の肺気腫予防・治療戦略の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K11881
研究機関足利大学

研究代表者

須永 浩章  足利大学, 工学部, 講師 (10760077)

研究分担者 松井 弘樹  群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (20431710)
横山 知行  群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (70312890)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード脂肪酸 / 肺気腫 / 脂肪酸組成 / 脂肪酸補充
研究実績の概要

我々はこれまでに、全身および肝臓特異的Elovl6欠損マウスでは先天性の肺気腫様病変をきたすこと、そのメカニズムとして、全身および肝臓特異的Elovl6欠損マウスでは肺気腫の病態に関連する特定のタンパクAの血中濃度が対照群マウスと比較して著明に低下していることを見出した。また、タンパクAの主要な産生臓器である肝臓において、Elovl6欠損マウスではタンパクAの発現が著明に減少していることを確認した。
Elovl6欠損により細胞内の脂肪酸組成が変化することから、この組成変化が肝臓でのタンパクAの発現動態にどのように影響するかを解明するため、培養マウス肝細胞を用いて解析を行った。培養肝細胞にsiRNAを用いてElovl6をノックダウンさせたところ、タンパクAをコードする遺伝子Xの発現が著明に低下した。次に、培養肝細胞に組成変化が認められた脂肪酸を添加したところ、特定の脂肪酸添加により遺伝子Xの著明な発現低下を認めた。また、培養肝細胞に遺伝子Xの発現ベクターを導入して遺伝子Xを過剰発現させると、メディウム中のタンパクA濃度が著明に増加した。一方で、過剰発現と同時にElovl6をノックダウンさせるとメディウム中のタンパクA濃度が有意に低下することを確認した。さらに、脂肪酸添加で同様の検討を行ったところ、特定の脂肪酸添加によりメディウム中のタンパクA濃度が有意に低下することを見出した。
以上より、肝細胞へのElovl6のノックダウンおよび脂肪酸組成の変化がタンパクAの産生および細胞外分泌に影響し、これにより全身および肝臓特異的Elovl6欠損マウスにおける血中タンパクA濃度の低下を引き起こす可能性が示唆された。現在、タンパクAの産生を制御している責任脂肪酸の同定を進め、肺気腫モデルマウスやElovl6欠損マウスへの外因的補充により肺気腫の発症・進展抑制効果が見られるか、検討を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

遺伝子Xの発現ベクターによる培養マウス肝細胞への過剰発現やsiRNAによるElovl6のノックダウン実験、タンパクAの産生を制御する責任脂肪酸の同定など、着実に研究計画は進んでおり、順調に成果も得られている。

今後の研究の推進方策

今後は培養肝細胞、喫煙暴露による肺気腫病態モデルマウス、全身および肝臓特異的Elovl6欠損マウスの肝臓から脂質を抽出し、リピドミクス解析やメタボロミクス解析を行い、Elovl6欠損に伴うリン脂質や代謝産物などの詳細な解析を行っていく。さらに、高解像度質量顕微鏡やシングルセル解析により、肝細胞内の脂肪酸組成の変化とタンパクAの産生、タンパク結合と細胞外分泌への影響などを詳細に解析していく予定である。
また、タンパクAの発現や細胞外分泌に影響する脂肪酸・代謝産物が同定できたら、そこに拮抗するような脂質、薬剤などを同定し、Elovl6をノックダウンさせた肝細胞およびElovl6欠損マウスへ投与し、タンパクAの産生低下や細胞外分泌の抑制がキャンセルされるか、検討を進めていきたい。さらには、肺気腫病態モデルマウスやElovl6欠損マウスに対し、タンパクAの産生を制御している責任脂肪酸の外因的補充、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)による肝臓へのタンパクAの過剰発現により、肺気腫病態への発症・進展抑制効果が見られるか、上記の結果と併せて検討していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

令和4年度では、Elovl6による脂肪酸組成の変化がタンパクAの産生動態に及ぼす影響について培養マウス肝細胞を用いて解析を行った。しかし肺気腫病態モデルマウスおよびElovl6欠損マウスによる実験については、COVID-19感染拡大の状況下でマウスの飼育環境を縮小せざるを得ず、十分なマウスの病態解析を実施することが出来なかったため、当初の予定額を次年度へ繰り越す予定である。
(使用計画)
令和5年度に繰り越した研究費に関しては、令和4年度で解析しきれなかった肺気腫モデルマウスの病態に関する解析費用に充てる予定である。主な内訳としては、マウス飼育費、病態モデル動物の作製費、コントロールとしての野生型マウスの購入費、肝臓および肺組織・血液・培養細胞サンプルにおける脂肪酸分画の測定費、PCR用試薬および抗体購入費などである。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 備考 (4件)

  • [雑誌論文] Ketone body and FGF21 coordinately regulate fasting-induced oxidative stress response in the heart2022

    • 著者名/発表者名
      Kawakami Ryo、Sunaga Hiroaki、Iso Tatsuya、Kaneko Ryosuke、Koitabashi Norimichi、Obokata Masaru、Harada Tomonari、Matsui Hiroki、Yokoyama Tomoyuki、Kurabayashi Masahiko
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 7338

    • DOI

      10.1038/s41598-022-10993-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Genetic deletion of Elovl6 in cardiac fibroblast attenuates fibrotic response during pressure overload in mice.2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki Sunaga, Hiroki Matsui, Nozomi Furukawa, Ryo Kawakami, Tatsuya Iso, Norimichi Koitabashi, Tomoyuki Yokoyama, Hideki Ishii, Masahiko Kurabayashi.
    • 学会等名
      第87回 日本循環器学会学術集会
  • [学会発表] Inflammatory Cytokine Production by Visceral Fat in Heart Failure with Failure with Preserved Ejection Fraction.2023

    • 著者名/発表者名
      永田 玲香、小保方 優、松井 弘樹、須永 浩章、川上 亮、原田 智成、磯 達也、横山 知行、石井 秀樹
    • 学会等名
      第87回 日本循環器学会学術集会
  • [学会発表] Deletion of Fatty acid Synthase in Vascular Smooth Muscle Cells Attenuates Neointima Formation after Vascular Injury in Mice.2023

    • 著者名/発表者名
      佐藤 勇輝、松井 弘樹、須永 浩章、川上 亮、磯 達也、石井 秀樹、横山 知行、倉林 正彦
    • 学会等名
      第87回 日本循環器学会学術集会
  • [備考] 足利大学

    • URL

      https://www.ashitech.ac.jp/

  • [備考] 群馬大学大学院医学系研究科 内科学講座 循環器内科学

    • URL

      https://gucvmed.med.gunma-u.ac.jp/

  • [備考] 群馬大学大学院保健学研究科 生体情報検査科学講座 横山・松井研究室

    • URL

      http://heart.health.gunma-u.ac.jp

  • [備考] researchmap(須永浩章)

    • URL

      https://researchmap.jp/hiroakisunaga

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公開日: 2023-12-25  

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