研究課題/領域番号 |
22K11885
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
木村 真規 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (40383666)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 運動 / 肥満 / レガシー効果 / 環境エンリッチメント / 骨格筋 / 褐色脂肪 / 高脂肪食 / 老化 |
研究実績の概要 |
これまでの研究によって,若齢期の肥満・運動経験が白色脂肪組織中の遺伝子発現を長期に亘って変化させる可能性を報告したが,特に糖・脂質代謝系,熱産生系および老化関連遺伝子の発現に大きな変化が認められたことから,主要な関連組織である骨格筋および褐色脂肪組織においてもこの様な長期的効果が生じている可能性が示唆された.また近年,全身または脂肪組織における老化関連遺伝子の発現上昇は糖・脂質代謝や運動機能,寿命に影響する可能性が報告されており,骨格筋および褐色脂肪組織においても老化関連遺伝子の発現変化が細胞・組織の様々な機能に影響を及ぼしている可能性が示唆されている. そこで本研究では,肥満・運動経験により長期に亘って糖・脂質代謝を変化させる骨格筋・褐色脂肪組織の長期的影響(レガシー・遺産)因子を明らかにすることを目的として,①「若齢期の肥満・運動経験によって長期間変化する遺伝子の網羅的およびエピジェネティクス的解析」,②「老齢期の健康・長寿を導く若齢期・成熟期の生活環境(食・運動・豊かな環境)の探索」の2点から検討を行う. 令和4年度は,検討①と検討②を計画通り開始した.検討①については令和5年1月にマウスを購入して実験をスタートし,現在,運動ケージによる飼育および高脂肪食摂取による介入実験を遂行中である.また検討②については,対象をICRマウスからC57BL/6マウスに変更し,令和4年5月にマウスを購入して飼育を実施中であり,現在も順調に飼育を継続しており経過を観察中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は,本研究課題の採択および助成金の交付を受けて,検討①「若齢期の肥満・運動経験によって長期間変化する遺伝子の網羅的およびエピジェネティクス的解析」と,検討②「老齢期の健康・長寿を導く若齢期・成熟期の生活環境(食・運動・豊かな環境)の探索」の両プロトコールを計画通りに開始した. 検討①については令和5年1月に1クール目のICRマウスを購入し実験をスタートした.現在のところ飼育は順調に進行しており,令和5年4月に介入開始前の経口糖負荷試験(OGTT)を実施し,特に問題無く測定を終了した.測定データを解析・評価後に群分けを行い,現在,運動ケージによる飼育および高脂肪食摂取による介入実験を遂行中である. また検討②については,対象をICRマウスからC57BL/6マウスに変更し,令和4年5月にマウスを購入して若齢期の豊かな環境における飼育を開始した.令和5年1月には成熟期の介入をスタートし,これまでのところ以前観察された様なファイティングやイジメの様な行動は観察されておらず,現在も順調に飼育を継続しており経過を観察中である.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,検討①の「若齢期の肥満・運動経験によって長期間変化する遺伝子の網羅的およびエピジェネティクス的解析」について,令和5年1月に実験を開始した1クール目のマウスを対象に令和5年4月に経口糖負荷試験(OGTT)を実施し,測定データを解析・評価後に群分けを行って,運動ケージによる飼育および高脂肪食摂取による介入実験を実施する.令和5年6月に1クール目のサンプリングを実施する予定である. また検討②「老齢期の健康・長寿を導く若齢期・成熟期の生活環境(食・運動・豊かな環境)の探索」については, C57BL/6マウスを対象に令和4年5月に開始した若齢期および令和5年1月に開始した成熟期の豊かな環境における飼育を,老齢期のマウスに対して令和5年10月から実施する予定である. 今後,それぞれの環境で飼育したマウスをサンプリングし,骨格筋および褐色脂肪組織に発現する遺伝子の網羅的解析を実施する.その後,候補遺伝子を選定し,Realtime-PCR 法,Western-Blotting 法およびBisulfite Sequencing法による解析を実施することによってレガシー効果の候補因子を同定する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: 実験動物の購入などは計画通りに実施できたが,当初より血液・組織などのサンプルの測定試薬は令和4~6年度にかけて必要に応じて適宜購入する予定であり,サンプルの調整や測定の順序はそれまでに得られたデータの内容や国内外の研究成果,他の業務の状況などによって調整を行っている.令和4年度はサンプル測定における試薬の選択・基礎的検討においては,比較的低価格の試薬を用いた測定が多く次年度繰越金が生じたが,この様な状況は当初から想定された範囲内であり,今後,測定サンプルは増えていき実験消耗品の購入額は増える予定であることから,次年度使用額の使用において特に問題点は見当たらない. 使用計画: 令和5~6年度において,残された実験プロトコールの遂行や問題解決の為の基礎的検討を実施する.また,血液・組織などのサンプルの調整・測定・基礎的検討を続けて実施する.令和5~6年度はこれらに必要な試薬などを適宜購入して,残りの実験・測定を遂行する予定である.
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