研究課題/領域番号 |
22K11905
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
野崎 隆之 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (70707497)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 挿入削除訂正符号 / 挿入訂正法 / 量子符号 / 削除数検出符号 |
研究実績の概要 |
情報通信および情報記録において,送信系列の中のシンボルが抜け落ちる削除誤りや新たなシンボルが追加される挿入誤りが生じうる.これらの誤りを訂正可能な系列の集合を挿入削除訂正符号と呼び,受け取った系列から元の系列を推定する操作を復号と呼ぶ.本研究課題では,昨年度に引き続き,挿入削除訂正符号の構成法とその復号法を与え,その性能を数理的ならびに数値計算によって解析をした.主要な結果は次の3点である. (1) 受信側で福情報として誤りの生じた範囲が与えられた場合,通常の削除訂正符号よりも小さな冗長性で誤りを訂正可能な符号を構成できる.本研究では,受信側が誤りの生じた範囲を福情報として得られた場合に,1つまでの削除誤りまたは挿入誤りを訂正できる多元符号を4種類構成した.これらの符号に対して,符号化法と復号法を与え,その符号語数を計算機によって評価した. (2) 量子削除訂正符号はある条件下において量子挿入誤りも訂正可能である.しかしながら,挿入訂正法は自明ではなく,一般に削除訂正よりも複雑な手法になる.さらに挿入誤りと削除誤りが複合的に生じた場合の復号法は古典符号においても困難な問題とされる.本研究では,既存の複数の削除が訂正可能な2元量子符号に対して,複数の挿入が生じた場合にも復号可能なアルゴリズムを構成した.また,既存の複数の削除が訂正可能な多元量子符号に対して,1つの挿入と1つの削除が同時に生じた場合にも復号可能なアルゴリズムを構成した. (3) いくつかの系列を連接して送信語を作成する場合,たとえ各系列が削除訂正能力を持っていたとしても,各系列に生じている削除数を正確に特定しないと送信語が特定できないことが知られている.本研究では,各系列に生じた削除数を特定可能な符号を作成し,削除数の推定アルゴリズムを構築した.さらに,得られた符号は既存の符号よりも冗長性が小さいことを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りに研究成果が得られているので.
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた成果に関しては,国内研究会での発表が主であった.2024年度においては,これらの成果を英文でまとめ,国際学術会議や国際論文誌での公表を目指していく.これと並行して,新たな挿入削除訂正符号の構成とその復号法の提案を引き続き実施していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
予算作成時に予定していた国際会議への出張が論文不採録によってとりやめになり,2名分の海外出張費および国際会議参加費を使用しなかった.また,2023年度中に一件の論文が国際論文誌に採択される予定で予算を組んだが,論文投稿作業に遅れが生じたために論文掲載料が不使用となった. これらの次年度使用額については,2024年度に開催される国際会議への旅費および参加費に充てるとともに,現在投稿中の論文の掲載費に充てる予定である.
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