研究課題/領域番号 |
22K11906
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
縫田 光司 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (20435762)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 暗号理論 / 安全性証明 |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、まず、秘密計算プロトコルに対する従来の(semi-honest攻撃者を想定した場合の)安全性の定義について再考し、従来の安全性定義が要求する安全性要件が強すぎる(本来は「安全である」と見なされるべきプロトコルがそう判定されない)可能性を指摘するとともにその問題点の改善方法を模索した(国内学会発表済、論文投稿準備中)より詳しくは、「暗号文からもとのデータの情報が何も漏れない」ことが理論的に保証されているはずのワンタイムパッド暗号化方式を秘密計算プロトコルに組み込んだ際に、従来の安全性定義ではプロトコルが「安全でない」と判定されてしまうという問題点を見出した。 また、秘密計算の一種であるPrivate Simultaneous Messages(PSM)について、与えられたプロトコルの安全性要件を単体的複体という組合せ論的な対象の性質として記述する方法を見出した(査読付国際会議INDOCRYPT 2023に採録済)。 他にも、秘密計算プロトコルにおける事前共有乱数の安全かつ効率的な使用法に関する研究(査読付国際会議ITC 2023に採録済、査読付国際論文誌IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences(以下、IEICE Trans.)に採録済)や、秘密分散法の離散数学的手法に基づく構成法についてその安全性の検証を行った(査読付国際論文誌IEICE Trans.に採録決定済)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度までに実施した2点の研究課題(暗号学的擬似乱数を用いた暗号技術の実装の安全性、公開鍵暗号技術における安全性定義)に加えて、新たに秘密計算技術の従来の安全性定義に関する再検討を行い成果を得た。またそれに加えて、上記課題の副次的な成果として秘密計算技術およびその基盤技術の一つである秘密分散技術の安全性検証に関する複数の成果を得て論文発表(採録決定を含む)を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本年度の研究成果をさらに発展させる方針である。特に、本年度の主な研究成果である秘密計算技術の安全性定義に関する分析では、従来の定義の問題点を解消する改良案において(本研究で指摘したものとは異なる)問題点が見つかっていることから、その問題点を解決する点が主な研究課題となると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に実施を予定していた研究打ち合わせについて、学内業務等の関係で中止となったものやオンラインでの実施に切り替えたものが存在したため、出張旅費に残額が生じた。次年度にはこの残額を利用して追加の研究打ち合わせを行う計画である。
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