研究課題/領域番号 |
22K11911
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
松本 直己 慶應義塾大学, デジタルメディア・コンテンツ統合研究センター(日吉), 特任助教 (50747243)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | コミュニティ / ランダムウォーク / マルチレイヤネットワーク |
研究実績の概要 |
交付申請書に記載した通り,初年度はこれまでの確率的ブロックモデルに関する先行研究と,一般のランダムグラフに対するグラフの不変量評価に関する文献調査を行った.加えて,多くの研究集会や打ち合わせに参加し,最近の研究状況に関して情報交換を行った. その傍らで,ネットワークにおけるコミュニティ構造に関していくつかの共同研究を進めた.特に,慶應義塾大学のチームと共に,いくつかのネットワークを組合わせて得られるマルチレイヤネットワークにおけるコミュニティ抽出技術についての研究を行った. マルチレイヤネットワークにおけるコミュニティ抽出では,各レイヤの反映度をネットワーク構造から推測する研究が行われてきた.しかしながら,理想の反映度を与えられたネットワークから推測することは困難であり,むしろ幅広い反映度を単調に変化させるような重ね合わせ手法によって,ネットワーク解析者が求める各レイヤの反映度を見つけやすくすることが求められていた.そこで当該共同研究では,反映度制御を可能とするマルチレイヤの重ね合わせ手法WAPPRSを提案した.WAPPRSでは,指定した反映度制御パラメータに応じた各レイヤの辺への重み付けと始点回帰辺の導入によって,各頂点の密接度を制御し,各レイヤの反映幅と単調増加性を維持したコミュニティ抽出を行う.実世界データを用いた評価実験では,各レイヤからコミュニティ内に入った頂点の数に基づく反映度の幅および単調増加性において提案手法が先行研究を上回る結果を示すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
確率的ブロックモデルに関する先行研究と,一般のランダムグラフに対するグラフの不変量評価に関する文献調査は順調に進んでいる.加えて,慶應義塾大学の研究チームとの共同研究によって,コミュニティ抽出に関する新しい技術の開発も同時に進められており,当該年度においては本研究課題はおおむね順調に進んでいるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
文献調査なども引き続き行いながら,今後は,交付申請書にも記載した二つの課題(i)現実世界のネットワークの主要な3性質(スケールフリー性,スモールワールド性,クラスター性)を表現するグラフの不変量推定,(ii)確率的ブロックモデルによって生成されるグラフの特徴量解析,にも着手する.加えて,様々なグラフの不変量とコミュニティ抽出にも利用されているランダムウォークなどのネットワーク解析技術の関係についても研究を行う予定である.
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