研究課題/領域番号 |
22K11941
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
藤崎 弘士 日本医科大学, 医学部, 教授 (60573243)
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研究分担者 |
小田切 健太 専修大学, ネットワーク情報学部, 准教授 (20552425)
末谷 大道 大分大学, 理工学部, 教授 (40507167)
森次 圭 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80599506)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 時系列解析 / 分子動力学 / 多様体学習 / ニューラルネットワーク |
研究実績の概要 |
生命現象をダイナミクスとして考えるとそれは高次元空間上の運動であるが、実験・観測データは様々な技術上の制約から低次元性をもつことが多い。また生体ダイナミクスの本質的な部分が低次元に埋め込まれていることも考えられるので、高次元生体ダイナミクス時系列をいかに縮約し、その中の本質を取り出すかということは重要な課題である。一方、データサイエンスの現場においては画像などの情報を縮約するために、深層学習の手法の一つであるオートエンコーダや、多様体学習などが用いられることが多い。そこで、ここでは分子動力学シミュレーションにより得られるタンパク質ダイナミクスの時系列やその他の関連する生体時系列にこれらの手法を適用し、得られる低次元表現の解釈をダイナミクスの観点から行った。 今年度はチニョリンやアデニル酸キナーゼの重み付きアンサンブル法による構造変化のシミュレーションを行い、それに基づき on-the-fly で拡散マップの計算を行った。その結果、長時間のシミュレーションと似たような多様体が抜き出せることが分かった。またモデル系(レナードジョーンズ粒子系)の多体系のダイナミクスに拡散マップや時間遅れのあるオートエンコーダを適用し、その低次元表現が特に時間的に振動しているときの意味付けを与えることができた。また、多状態のポッツ模型のキネティックな「ダイナミクス」にも拡散マップを適用し、相転移する際に拡散マップ座標に非ガウス的な揺らぎが現れることを確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に書いていた方針に従って研究を進展させて、予備的な結果を得るところまでできたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を論文としてまとめるとともに、低次元表現の意味付けを行うために、低次元表現から元の高次元表現へのマップを構成する必要がある。そのためには、低次元表現に制約された分子シミュレーションを行うことで、高次元表現を生成したり、またはデータをニューラルネットワークに入力しパラメータを学習させることでマップを作る。細胞のモデルに関しては、セルラーポッツモデルを用いているが、血管新生が生じるようなパラメータ空間を選定し、その時系列解析も行って実験と比較する。また Oura ring などのウェアラブルデバイスから得られるバイタルの時系列の解析も行い、種々の高次元生体時系列の特徴をつかむ。
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次年度使用額が生じた理由 |
掲載料の高額なジャーナルに論文を出版しなかったので、余った予算を次年度に回すことにした。
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