研究課題/領域番号 |
22K11982
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
布田 裕一 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 教授 (50706223)
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研究分担者 |
岡崎 裕之 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (50432167)
鈴木 彦文 国立情報学研究所, 学術基盤課, 特任准教授 (30300578)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | セキュリティ評価 / 仮想化技術 / DDoS攻撃 / 観測等価性 |
研究実績の概要 |
令和5年度は研究課題1:仮想化技術を用いたDDoS攻撃の攻撃評価環境の評価及び実機環境との比較と、研究課題2:仮想モデルと実機モデルの観測等価性の判定フレームワークの構築に取り組んだ。 研究課題1に関して、DoS攻撃の一種であるTCP Flood攻撃によるUTMがダウンする状況を、仮想化技術を用いて再現する評価環境における詳細な評価を実施した。評価の結果、UTMがKernelパニックを発生してダウンしたと結論づけた。UTMがKernelパニックを発生しやすいDoS攻撃とその防御方法を検討し、UTMの実機環境とSnortによる仮想環境で同等の防御が可能であることを確認した。 さらに、UTMに記録された実際のトラフィックログから DNSに関する通信を抽出し、SOMによりデータマイニングすることで DNSに対する DoS/DDoSの検出支援システムの構築を試みた。これにより実際のDoS/DDoS攻撃を検出するためのデータマイニング等のAI技術活用に関して知見を深めた。 研究課題2に関しては、仮想環境を用いてDDoS攻撃評価を行う際には、評価結果の信頼度が仮想環境と実環境間のギャップに依存する。そこで仮想環境と実環境をそれぞれ形式モデル化して、そのギャップをモデル検査技術によって評価する手法の開発を進めている。令和5年度は、評価に利用する形式検証の形式記述表現力と検証能力の評価のため、形式検証ツールProVerifにおいて本来の検証対象とする暗号プロトコルよりも抽象度を低くし、実環境に近いモデルでの検証方法を提案した。本提案方式により、従来の検証ではブラックボックス化して理想的な暗号機能として扱い検証を行っていた暗号モジュールの内部動作の形式検証と性能評価を実施した。提案方式の一例としてProVerifで繰り返し構造やサブルーチンコールなどを形式モデル化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度の目標は、研究課題1におけるDoS攻撃の詳細な攻撃評価及び実機環境との比較を継続で実施し動作の違いを吸収する模倣方法を検討することであった。これについては、詳細な攻撃評価を実施でき、TCP Flood攻撃によるUTMがダウンした理由やUTMのダウンしやすいDoS攻撃の分析が完了している。さらに、UTMがダウンしやすいDoS攻撃の防御方法も考案でき、防御側における仮想環境と実機環境で同等の防御となることを確認できている。動作の違いを吸収する模倣方法の検討が不足しているが、防御方法まで考案できている。 研究課題2においては、評価に利用する形式検証の形式記述表現力と検証能力の評価のため、形式検証ツールProVerifにおいて本来の検証対象とする暗号プロトコルよりも抽象度を低くし、実環境に近いモデルでの検証方法を提案できた。 以上より総合的には「おおむね順調に進展」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題1に関しては、DoS攻撃の攻撃評価環境及びそれを用いた防御方法の詳細検討と、仮想環境と実機環境の動作の違いを吸収する模倣方法を引き続き検討する。 研究課題2に関しては、仮想環境と抽象度を下げた実環境の動作の違いに対する観測等価性の影響と判定フレームワークの検討を進める。また、実装レベルでの形式的安全性検証を実現する試みとして、令和5年度までに作成したMD変換等の形式モデルを利用して、故障利用攻撃等のモデル検査手法の開発を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
検証環境の構築用計算機で使用するPC部品の一部を購入する予定であったが、検証環境構築の遅れが生じており、令和6年度に購入し作成することにしたため次年度使用額が生じた。令和6年度において、研究打ち合わせや学会発表による予算執行を予定している。
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