研究課題/領域番号 |
22K11998
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
ロペズ ギヨーム 青山学院大学, 理工学部, 教授 (80572958)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ウェアラブル / 生体センシング / スキルアップ支援 / ナッジ / 行動認識 / スキル定量化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,近年普及しつつある日常生活で用いることのできる市販の汎用的なウェアラブル端末(リストバンド型,イヤホン型,インソール型,チェストバンド型など)を用い日常的なトレーニングを楽しく行えるように支援することである.ウェアラブル端末のセンサ信号(加速度,角速度,心拍数など)とフィードバック機能(画面,振動,音など)を汎用的に統合するプラットフォームを構築するとともに,そのプラットフォームを活用する運動スキル向上支援システムを開発し,様々なスポーツの継続性およびスキルの向上への効果を検証する. 2022年度は,様々なスポーツを対象に,実験環境ではなく,リアルな実施環境においてデータを取得,提案システムを評価することに注力した.具体的に,サッカー練習,テニス練習と,ボクササイズにおいては,データ取得,行動検出と,行動識別を行って.体幹トレーニングとランニングにおいては,運動効果向上に繋がるリアルタイムフィードバックの効果を検証した. リアルな実施環境における行動自動検出は,サッカー・テニス・ボクササイズとも,90%以上の検出率を実現した.行動の自動分類に関して,サッカーにおいて5つ,ボクササイズにおいて4つ,テニスにおいて3つをターゲットにするとともに,その他のターゲットではない行動も混在した場合の機械学習モデルの平均精度を評価し,個人間よりも,行動間のバラつきが大きいことが分かった. また,リアルタイムフィードバックに関して,体幹トレーニングにおいて,聴覚と視覚の刺激を組み合わせることが効果的だと分かった.そして,ランニングにおいて,一人で目標のクリアを目指すよりも,遠隔もしくは仮想な相手と競い合った方がより強度の強い運動に自分を追い詰めることができることを示した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するために,次の3つの独自的な技術を創造している:①デバイス非依存挙動認識手法,②動的技能レベル定量化手法,③スキル向上ナッジ. まず,①に関して,周期的・非周期的運動・スポーツのデータを取得すること,既存の機械学習手法の汎用性を評価することと,スポーツ種に依存しない動作検出と認識手法の開発を開始することを目標たてた.本項目は,主にサッカー・テニス(非周期的運動)と,ボクササイズ(周期的運動)において取り組んだ.各運動の体動データ波形の分析から,どのタイプの運動でも90%以上の動作検出率を実現するセグメンテーション手法を提案した.一般的な機械学習による動作認識は実験環境で取得したデータに対して高性能を実現していても,実環境でのデータに対して,4-5つの動作認識の平均精度が60-0%代と低くなってしまうことが分かった.また,実際のユーザに利用して,ニーズおよび改善点を指摘して頂けるように,センシング,データ通信,動作検出,動作識別,結果のリアルタイム蓄積・表示の一連の処理を統合したシステムの開発を行った. ②に関して,テニスにおいて初心者と経験者のラリーデータを取得し,動作(ストローク)の自動検出と3つのストロークの種類の識別を行った.スキルレベルは検出率にあまり影響しなかったが,識別精度のバラつきに大きく影響した. ③に関して,サッカー,体幹トレーニングおよび,ランニングにおいて,センサデータのリアルタイム処理結果をフィードバックする機能を実装した.単純な認識と動作カウント結果をリアルタイム表示するアプリ(サッカー)から,絵を用いた視覚的フィードバックと音を用いた聴覚的フィードバックを組み合わせたアプリ(体幹トレーニング、ランニング)まで開発した.
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では,主に次の3つの独自的な技術の創造に取り組んでいる:①デバイス非依存挙動認識手法,②動的技能レベル定量化手法,③スキル向上ナッジ. ①に関して,各スポーツ・運動における既存手法の性能評価と欠点を明確にした.動作検出率はまだ向上する余地がありつつ,現状では十分利用できる.一方,動作の認識制度は,簡易ユーザ評価の結果から,60%代では不十分で,システムの利用性を大きく下げてしまう.なお,個人差よりも,動作間の差の影響が大きいことから,各動作を表現する特徴量を検討することで改善が見込まれる.また,センサの装着位置を変えた場合の性能への影響も検証していく. ②に関して,各スポーツ・運動において,より多くの技能レベルの方のデータを取得し,レベル判定手法の検討を行っていく. ③に関して,リアルタイムだけではなく,中期的なスキル改善およびモチベーション維持に効果のあるフィードバック提示手法の提案と実装を行っていく. 最後に,各スポーツ・運動専用のシステムから,共通に利用できる総合プラットフォームの開発を開始する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
世界情勢の影響で,国際会議に伴う旅費が当初より高くなり,全体の配分がそちらに多くなってしまい,他の項目を減らす・縮小する必要があった.に関して,先述の影響による心配から,本研究の実験関連の謝金を学内の予算から支出することとした.なお,2022年度末開始に予定していた様々な技能レベルの一般の方に協力頂く実験は,COVID-19の影響もあり,2023年度に開始することになったことで,謝金関連予算を2023年度に執行することになった.
|