研究課題/領域番号 |
22K12005
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
宮澤 高也 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワーク研究所, 研究マネージャー (10826366)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 計算リソース制御 / ネットワーク機能 / 機械学習 / データ分析 / 回帰分析 / AI間連携 |
研究実績の概要 |
2023年度は、(1)各ベンダ網内の網機能(NF)のCPU利用分析、及び(2)複数のベンダ網AIエンジン間連携に着目し、各々、主に下記の研究成果をあげた。 (1) 非線形回帰分析とクラスタリングと重回帰分析の3種類の機械学習アルゴリズムをカスケード接続して逐次的分析処理を行う Intelligent Model Pipelining (IMP) 技術を、ローカル検証用の仮想化基盤上で実装した。本技術は、特定期間における秒毎のCPU利用率とピーク利用の双方の予測を自動実行できるといったデータ分析高度化に寄与し、さらに仮想NF及びコンテナNFのデータ分析における学習過程を秒単位で自動実行可能とする。研究成果を国際標準化機関の1つである国際電気通信連合(ITU-T)のジャーナル誌(The ITU Journal on Future and Evolving Technologies (ITU J-FET))に掲載した。 (2) 情報通信研究機構(NICT)が運用する研究開発用ネットワークテストベッド(JGN)上に、大手町・堂島・名古屋の3拠点を跨いだ大規模仮想ネットワーク実験環境を構築した。当該環境にて、情報指向ネットワークのオープンソースソフトウェアであるCeforeのルータ機能及びキャッシュ機能を仮想NFとして組み込み、複数のサブネットのAIエンジン間で連携できる仕組みを設計・実装、及び実験・評価を行い、CPU利用変動の予測誤差を約50%低減可能であることを示した。本技術により、サブネット毎にCPU利用変動をAI分析した結果をサブネット間で共有することで、サブネット毎/VNF毎にAIのアルゴリズムを自律的に更新可能となる。 以上の2つの成果は、NFの計算リソース利用状況が時々刻々と変動しても、変化に追従した計算リソース動的調整を可能とし、ユーザへのサービス品質の維持向上に貢献する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、複数のベンダ実装環境及びサーバ仮想化環境を含むマルチベンダネットワークにおいて、サーバ仮想化環境の状況に適した計算リソース制御最適化に向けたAI間自動連携モデル、特に重回帰分析モデルの提案を行い、シミュレーションや実データ分析(数値解析)等により提案方式の有効性を示すものである。 そのため、下記の研究計画をもとに、ステップ・バイ・ステップで取り組んでいる。 「初年度」:各ベンダネットワークの構成や状況、性能要件等に適したAIモデルを創出し、シミュレーションや既製品ソフトウェアによる数値解析により、リソース利用効率や処理性能等での提案方式の有効性を明らかにする。 「次年度」: 初年度の成果を踏まえ、複数種類のサーバ仮想化環境のAI間連携モデルを創出し、既製品ソフトウェアを用いた原理確認のための実データ計測/分析を行い、リソース利用効率や処理性能等での提案方式の有効性を明らかにする。 「最終年度」: AI間自動連携モデルについて、既製品ソフトウェア、さらには様々なアプリケーションを用いて 実データ計測及び分析を実施することにより、総合的な評価を行う。 2023年度は、本研究開発の2年度目であり、上記の「次年度」に記載の内容を対象とし、計画通り、複数種類のサーバ仮想化環境のAI間連携モデルを設計・実装、及びNICTのテストベッド(JGN)を使った実験及び評価を行い、その有効性を立証した。従って、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に対象とした各ベンダネットワーク内のAIモデルと、2023年度に対象とした複数のベンダ網AIエンジン間連携モデルを統合し、NICTが運用する研究開発用ネットワークテストベッド(JGN等)もフル活用した検証実験環境の構築、実験及び総合評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、複数のベンダネットワーク環境でのAI間連携モデルの早期実装とテストベッドを使った検証環境拡充を加速するべく、必要なサーバ機器の調達に使用した。 2024年度は、追加実装・実験を含めたこれまでの研究成果に関する学会(国際会議や研究会等)での対外発表や、関連する他機関の研究成果の調査等に関わる経費に、積極的に使用することで、成果の発表のみならず、本研究の位置づけを明確化するなどして本研究の有効性を強くアピールしていく必要があることから、今年度にサーバ機器の調達に使用した残額を、次年度使用額とした。
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