実施期間(2022年4月から2023年6月)で得られた主な成果は以下の通りである. (1)Fractional Step法と音速抑制法を用いた低マッハ数圧縮性流れの数値計算手法:課題代表者らがこれまでに検討してきた計算手法では,計算中に音速を人工的に抑制することで音速に基づくCourant-Friedrichs-Lewy条件を緩和し,流体の圧縮性(密度変化)を考慮しつつ低マッハ数の非等温流れを完全陽的に計算可能である.本手法を大きな温度変化を伴う粒子層間隙における気体の流動計算に適用すべく,まずは手法の基本的な特性を確認した.具体的には,2次元キャビティ流れとキャビティ内自然対流問題に本手法を適用し,音速を抑制しない場合の計算結果と比較した.その結果,キャビティ流れにおいては,音速を抑制した影響が流速や圧力に比べて密度や温度に現れやすく,音速を過剰に抑制すると流れのマッハ数が十分小さい場合でも密度や温度の変化が無視できなくなる可能性が示唆された.また,左右の壁面間に大きな温度差(720 K)を与えたキャビティ内自然対流の計算では,音速の抑制により温度変化の大きな箇所での圧力変化を過小評価する傾向があるものの,流速,温度,密度への影響は圧力に比べて非常に小さく,音速抑制法が計算を高速化する上で有効な手法であることを確認した. (2)直交格子を用いた自然対流を伴う水の凍結および氷の融解の数値計算手法:課題代表者らがこれまでに検討してきた数値計算手法について,水の凍結と氷の融解を同時に扱うべく,固液界面におけるステファン条件を用いた凍結層厚さの計算手法に改良を加えた.改良した手法を用いて自然対流を伴うキャビティ内の凍結・融解問題について数値実験を行い,対流による温度分布変化に応じて計算領域内で水の凍結と氷の融解が同時に生じるような複雑な問題への適用性を確認した.
|