研究課題/領域番号 |
22K12096
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
日浦 慎作 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (40314405)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 変更 / 材質認識 / end-to-end最適化 / 最適計測 |
研究実績の概要 |
カメラを用いた光学的な材質認識の方法として,一般的なカラーカメラで撮影された色やテクスチャの情報を手がかりとする方法のほか,多波長・近赤外線・遠赤外線などの光の波長に関する拡張や,BRDFや表面下散乱における光の時間遅れなどの様々な光学的な手がかりを用いる方法が提案されている.そのなかで,偏光も材質の識別に対して有用な情報である.
偏光における入射光と反射光の関係はミュラー行列と呼ばれる計16個のパラメータで表され,豊富な情報量を有するが,計測には光源側とカメラ側に取り付けた偏光素子を回転させ,複数の回転角度の組み合わせで撮影を行うため,計測には長時間を要する.一方,材質認識のタスクにおいて,ミュラー行列全体の情報は必ずしも必要ではない.そのため,全ての偏光情報を用いず,材質認識において重要となる偏光情報のみを重点的に計測することで,少ない計測回数でも高精度な認識が可能になると考えられる.しかし,どのような偏光素子の回転角度の組み合わせを用いて計測すればよいのかは明らかにはなっていなかった.
そこで本研究課題では,偏光を用いた材質認識のために,偏光計測系における偏光素子の回転角度の組み合わせと材質分類器を同時に最適化することで,少ない計測回数で高精度に材質認識できる手法について研究した.対象物体への入射光は偏光計測系により任意に変調可能であることを前提とした.直線偏光のみを用いる場合と,円偏光も利用する場合の両条件において,それぞれ学習を行った結果,いずれにおいても,提案手法が少ない計測回数で高い識別精度を達成した.また,直線偏光板のみを回転させた場合や1/4波長板のみを回転させた場合に比べ,直線偏光板と1/4波長板の双方の回転角度を最適化する手法が最も高い識別精度を達成できることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで明らかになっていなかった,偏光を用いた材質認識について,直線偏光情報だけでなく,円偏光の計測に基づく複屈折反射特性の情報が大きく寄与することが初めて明らかになった.特に,hand-craftedな計測手段でなく、最適化の結果得られた計測条件で差異が認められたことは有用であり,本研究課題は順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに1点計測による認識率の向上等を確かめたが,偏光テクスチャ情報を用いた認識については未検討であるため,今後はその研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度はそれまでに購入した装置で実験が行えたため,物品費や謝金等が抑えられた.令和6年度は偏光テクスチャ特性の計測を行うために高額な装置を購入する必要があり,次年度使用額として繰り越して購入する.
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