研究課題/領域番号 |
22K12098
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
木全 英明 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 教授 (80913582)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 点群 / ポイントクラウド / 符号化 / 深層学習 / 量子化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,実世界にある物体の形状を表現する点群について,点群に重要度の概念を取り入れて圧縮に利用することで,主観的に重要な点群の再現性を保ちつつ点群全体の圧縮効率を向上する方式を研究することである. 今年度は,まず点群に重要度を付与するアルゴリズムと,各点の属性情報を表現するための手法を研究した.形状の主要な特徴を表現することを点の重要度と定義して,その重要度を点群から取得するために,点群から一旦メッシュを構成し,メッシュとして形状の特徴を維持するような縮退を用いる手法を検討した.またこの縮退を繰り返し実行することで,形状の特徴を段階的に備えるメッシュシリーズを構成し,メッシュシリーズに基づいて各点の階層に関する属性情報を生成した.そして,点群の属性情報をコンパクトに表現するために,属性情報の圧縮方法を検討した.属性情報として今回は評価用データが多い色情報を用いて検討を行った.点群をブロック単位に分割して,分割したブロック内の色情報を面に投影して画像情報として扱う手法を検討した.ブロック内部に投影する方式とブロック外部に投影する方式を検討した.更に投影された属性情報を,変分オートエンコーダを用いて圧縮する方式を検討した.この方式の効果を実験で確認し,点の位置情報と属性情報をそれぞれの深層ネットワークで圧縮することを可能とする構成の実現性を確認した. 更に大規模な点群の圧縮にも適用可能とするため,点群の重要度の属性情報をもとに点群を階層化し,ブロック単位で符号化することで並列処理が可能な圧縮方式を検討した.各階層をブロック単位で符号化する際に,ブロック内の点が存在するパターンを深層ニューラルネットワークで符号化する方式と.ブロック内の点の位置を符号化する方式を比較検討した.階層の度合いにより圧縮効率の高い方式が異なることを実験により評価して明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目的は大きく二つであり,点群の形状を表現するための重要度を規定することと,それをコンパクトに表現するためのネットワーク構成を検討することであった. まず一つ目の目的については,点群の点から,ポリゴンからなるメッシュを構成し,メッシュの頂点を縮退することで,一連のメッシュシリーズを得るアルゴリズムを検討した.メッシュの頂点を縮退する際に,その頂点を使う面からの距離の合計が小さくなるように新たな頂点を生成する.このような縮退をメッシュ全体で行う.この縮退を繰り返し実施することで,段階的に頂点の数が少ないメッシュシリーズを構成する.このメッシュシリーズをもとに,元の点群中の点に対して.主要な形状の特徴を表すための重要度の属性情報を付与する.このように構成した点群と.従来の国際標準方式G-PCCによる形状を比較し,本方式の方が特徴を維持していることを検証した.これにより,形状の主要な特徴を表すための属性情報を得る方法の実現性を確認し,一つ目の目的は達成した. 次に重要度情報のネットワーク構成については,一般的な属性情報を表現できるオートエンコーダを用いる手法を検討した.点の位置情報自体をロッシーで符号化することを前提とするため,位置情報の劣化に対する依存性を減らすために属性情報をブロック内外の面に投影する手法を検討した.ブロック内部の面に投影する方式と外部の面に投影する方式を比較し,属性情報を投影する際の劣化は面の解像度に依存することを検証した.そして点群全体において投影した画像をより低次元に変換して符号化する方式を検討した.変分オートエンコーダを用いて低次元に変換した情報を圧縮する方式を検証した.その際に,ブロック状に分割した画像を訓練データに用いることで更なる圧縮効率の向上を実現できることを確認した.これにより二つ目の目的もほぼ達成した.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度には,令和4年度に得られた知見に基づき,点群の重要度に応じて符号化の歪と符号量を制御する方法を確立する.ブロック単位での符号化において,ブロック内の点の数に着目して制御することで劣化と符号量を制御する方式を検討する.ブロック単位での重要度情報の特徴の分析結果を用いて制御することで,ブロックから構成される点群全体での形状の主要な特徴を維持しつつ符号量を低減する方式を検討する.ブロック単位での制御においては,劣化を抑えるブロックの位置を決定する必要があるため,点群全体としての品質劣化の制御を検討する. 令和6年度には,令和5年度までに得られた知見に基づき,点群の符号化歪を補正する,すなわち点を復元する手法を検討する.点群全体で主要な形状の特徴を復元するように,点を復元する手法について,機械学習を用いた手法を検討する.重要度に応じた復元をするために,重要度に関係する属性情報を活用する手法を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定していた計算機の価格が変わったため差額が発生した.令和5年度には、形状の特徴を保持するように点群全体の符号化歪を制御することで高効率に圧縮する方式の検討が主となる.このため,令和4年度で発生した差額も使い,実世界にある様々な物体の形状を取得するセンサとセンサを制御するための機器,大量のデータを蓄積するための記録メディアやハードディスクを購入する.さらに,成果発表を積極的に行いたいと考えており,このため国内外の旅費として使用するとともに,外国語論文の校閲や投稿料として使用する.
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