研究課題/領域番号 |
22K12120
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研究機関 | 聖泉大学 |
研究代表者 |
鈴木 雅洋 聖泉大学, 人間学部, 准教授 (30397046)
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研究分担者 |
上平 員丈 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (50339892)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 3次元表示 / 3D表示 / AR / 拡張現実 / MR / 複合現実 / ナビゲーションシステム / 奥行き知覚 |
研究実績の概要 |
本研究では、屋外でのAR利用に必須となる数十m~数百mの遠方における任意の奥行きに仮想対象を表示できる画期的な表示技術を実現し、直感的でわかりやすいナビゲーションシステムの実現を目指している。また、広範囲の空間で現実世界と仮想世界の融合を可能にする本技術の特徴を活かした新しいARの応用を創出することも目的としている。遠方の任意の奥行きに仮想対象を表示するため、本研究では、生理的要因による奥行き知覚に加えて、シーン理解による高次の奥行き知覚要因を、空間の撮像画像から自動生成し、これら次元の異なる要因を同時に視覚系に提示する。このような、階層的な奥行き知覚要因を同時に提示する方法は、従来にはない新しい手法であり、さらに、統計的手法を導入して、シーン理解からの奥行き知覚の精度を高めるという手法も本研究の特色であり、3D表示の研究に新しい方向性を与えるとことが期待できる。 2022年度は、市販の光学シースルー型ヘッドマウントディスプレイを用いて、実空間に重畳された仮想対象の奥行き知覚を測定する実験を実施し、提案手法の実現性の明確化に取り組んだ。実験では、仮想対象に与える奥行き知覚の生理的要因のうち、両眼視差と輻輳とにより、これらが奥行き知覚要因として機能する近傍には仮想対象がないことを示す奥行き知覚要因を提示した。また、シーン理解による高次の奥行き知覚要因のうち、親近性がある大きさにより、仮想対象を重畳した実空間の遠方に実在する実対象と同じ奥行きに仮想対象があることを示す奥行き知覚要因を提示した。被験者には、仮想対象を重畳した実空間の航空写真に印をつけることにより、仮想対象を知覚した奥行きを応答させた。その結果から、数百m~千数百mの遠方に仮想対象を呈示できることを確認し、提案技術の実現可能性を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に提案手法の実現性の明確化に取り組むことは、当初からの計画のとおりであった。提案手法により数百m~千数百mの遠方に仮想対象を呈示できることを2022年度に確認できたことは、本研究の進捗にとって極めて重要な成果であった。しかし、両眼視差や輻輳などの奥行き知覚の生理的要因について、提案手法における役割の詳細に関する検討や、シーン理解による高次の奥行き知覚要因について、親近性がある大きさ以外の要因に関する検討など、提案手法の実現性の明確化に必要な検討は他にもあり、これらは2022年度には実施できなかった。以上のことから、現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進展していると判断した次第である。
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今後の研究の推進方策 |
提案手法の実現性の明確化については、必要な検討がまだ残っていることから、2023年度も引き続き、これに継続して取り組み、2023年度には提案手法の実現性の明確化を終了させる予定である。 当初からの計画では、2023年度は、データベース構築と仮想対象表示法の明確化とに取り組む予定となっている。提案手法では、機械学習により仮想対象の表示を最適化するので、機械学習に必要となる教師データを多数集めたデータベースの構築や、システムに仮想対象の最適な表示を学習させる機械学習法の明確化が必要となる。当初の計画のとおりに2023年度にこれらに取り組み、今後の研究を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
提案手法の実現性の明確化について、2022年度には実施できなかった検討があったために、次年度使用額が生じた次第である。次年度使用額は、これらの検討、およびこれらの検討についての成果発表に使用する計画である。
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