研究課題/領域番号 |
22K12127
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
藤本 雄一郎 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (30755971)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 拡張現実感 / 作業支援 / 訓練 / アイコンタクト |
研究実績の概要 |
本研究は,拡張現実感支援システムへの依存メカニズムを解明し,作業訓練(スキル獲得)に与える影響を明らかにすることを目的とする.今年度は,特に,「プレゼンテーション中のアイコンタクト」という特定スキルに着目し,下記の項目を実施した. (a)プレゼンテーション中のアイコンタクト支援システムの構築:光学透過型頭部装着ディスプレイであるHoloLens2を装着し,プレゼンテーション中に見るべき位置を動的にユーザに伝える支援システムを構築した.構築にあたり,高品質なプレゼンターの動作を動画から解析し,プレゼンテーション中の適切なアイコンタクトを定義するとともに,その支援手法を検討した. (b)支援効果と訓練効果の両立のためのメカニズムの一検討:項目(a)のシステムを複数回使用する際に,それに過度に依存しないようにするための手法を検討し,実装した.具体的には,現在のアイコンタクトスキルを指標化し,自動的にシステムに評価させるとともに,その結果を持って,次回使用時の,支援の方法を変化させる仕組みを提案した.具体的には,前回のスキルが高いほど,確率制御により,支援が行われる回数が減少する(つまり,時々独力で,アイコンタクトの場所を考え決定しなければならない)方法を構築した. (c)各被験者に,2週間のうちに,計5日間システムを使用させる実験を行った.何の支援も行われない場合と(a)の支援のみを適用した場合を比較することで,支援のみを行った場合,システム使用後の,ユーザのスキル向上が小さいことを明らかにした.さらに,(b)の戦略を適用した場合,支援のみを適用した場合と比較して,スキル向上が大きくなることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初のボトムアップ的な研究計画から方針変更を行い,まず,アイコンタクトスキルというケーススタディで,支援システムの構築と実験を行った.継続使用実験の結果,当初の想定通り,支援のみを使用した場合,訓練効果が低下することと,それを抑制する戦略例の提案まで初年度で行うことができたため,「おおむね順調に進展している.」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,異なる二つの作業支援シナリオにおいて,類似の検討を行う予定である.1点目は,現在のプレゼンテーション中のアイコンタクトスキルをより,インタラクティブなシナリオである,「他者との対話時」に拡張し,支援システムへの依存とその解決戦略の提案を行うことである.2点目は,当初の工業製品等の組み立て・点検作業支援に立ち返り,同様の検討を行うことである.来年度どちらを優先するかは,現在投稿中の論文の結果に依存する.最終的には,異なる複数のシナリオにおける知見を集め,それらからボトムアップ的により一般的な知見として体系化を図りたいと考えている.
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