研究課題/領域番号 |
22K12143
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
笹井 一人 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (00532219)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 拡張されたベイズ推論 / 天然知能 / レヴィウォーク / ジャンケンゲーム / カードチキンレース |
研究実績の概要 |
本研究は人間とAIの創造的なインタラクションを実現するためのエージェント行動のモデルとして,論理的推論に対して情動レベルでの創造性を付与して拡張されたベイズ推論を応用したモデルを提案し,それによるインタラクションの効果について検証することである.初年度は,拡張されたベイズ推論の応用モデルを設計し,エージェントに実装してその効果を確認することを目標に研究を行った. まず最初に,拡張されたベイズ推論を搭載するエージェントのモデルケースとして,ジャンケンゲームの開発を行った.このゲームのエージェント(ジャンケンエージェント)は次のように設計した:相手の出す手の確率分布(グー,チョキ,パーそれぞれを出す確率)を仮説として,ベイズモデルを構成し,相手の出した手を観測値として,各仮説の信頼度を更新する.各回において,エージェントは信頼度に基づいて選択した仮説の確率分布に基づいて生成した手を相手の手として,その手に勝利する手を選択する.拡張されたベイズ推論は,それに加えて,ある長さの手の記憶を元に新しい仮説を生成し,既存の仮説と入れ替える.実験では,ジャンケンエージェントのもたらす効果を確認するために,ランダムに手を出すエージェント,純粋ベイズ推論に基づくエージェント,そして人間同士のジャンケンを比較した.結果として,拡張されたベイズ推論に基づくエージェントのケースは,人間同士のジャンケンに似たレヴィウォークを示し,それ以外のエージェントではそのような特徴は見られなかった. また,ジャンケンゲームとは異なる例として,チキンレースゲームをカードを用いて行う,カードチキンレースゲームを考案し,同じく拡張されたベイズ推論を適用したところ,上記と同様のレヴィウォーク的特徴を確認することができた.異なる2種類のゲームにおいて同様の性質が見られたことは,大きな成果であり,複数の会議にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度において,本研究において中核となる拡張されたベイズ推論を用いたエージェントの行動モデルが,人間との相互作用において創造性を実現する上で重要な役割を果たすのではないかという仮説に対して,レヴィウォークという人間の行動の特徴を再現することでその可能性を示すことができた点は初年度として十分な成果であったといえる.その一方で,それらの結果を論文として発表するための統計的有意性を指示するに足る実験サンプル数を集めるためには,実験系のWebアプリ化が急がれなければならないが,当該年度にその完了までは至れなかった.サーバの構築やフロントエンドの開発などはできているため,次年度の早い時期に実装を完了できる見込みであるため,十分に遅れを取り戻すことが可能であるとみている.
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今後の研究の推進方策 |
初年度において実現できなかったWebアプリを用いた大規模なサンプル収集の準備を引き続き行い,研究成果を確定させて論文を執筆することを最優先に取り組む.また,別途研究計画としている,協力ゲームへの実装を進めるため,協力ゲームモデルの選定,研究調査および推論モデルの開発を引き続き行う. また,初年度の結果は,特定のモデルパラメータを用いているため,その妥当性に関する研究も並行して行っていく.また,研究計画として令和5年度は,より難関な国際会議への挑戦なども計画している.よって,応募予定の会議の選定および論文執筆についても意欲的に取り組んでいく.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたクラウドサーバーの使用料が計画よりも低かった.次年度使用額については,次年度に予定していたワークステーションの購入費用に当てる.
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