研究実績の概要 |
本研究では, 限られた異常画像サンプルからでも異常の特徴を効率的に学習可能な外観検査AIを実現するため, 教師なし学習によって得られた異常に関する知見を異常検出に用いるCNNに取り込むための注視機構:外部駆動型の視覚注視機構を提案する。当該年度では, 外部駆動型注視の最も基本的な仕組みをディープニューラルネットワークに実装し, 工業製品), 植物, DRIVEなど, 多様な実問題のデータセットに対し, 本技術の有効性の検証を行った。その結果, 多くのケースにおいて外部駆動型注視機構により異常検出性能を底上げすることができることを確認した。また, 自己注視機構を備えたディープニューラルネットワークに対しても, 大半のケースで同様に基本性能を底上げできることを確認した。これは, 自己注視機構と外部駆動型注視機構は相補的に機能し, ディープニューラルネットワークの特徴や識別能力に寄与できるという仮説を支持する結果であると考えられる。ここまでに得られた成果について, 査読付き国際会議に投稿し, 採択された。
次に, 上記とはやや異なる成果について述べる。提案技術では, 他の良品学習を行った学習済みニューラルネットから出力した異常マップを, 視覚注視機構を通して異常検出ネットワークに与える。提案技術の有効性は, この良品学習をどのようなモデル, 過程で行うかに強く依存すると考えられる。そこで, 画像全体の自己再構成, 画像の色の再構成, 画像の局所欠損補完など, いくつかの異なる画像復元プロセスを異なるモデルを用いて学習し, その出力を外部駆動型視覚注視に用いて, 結果の比較を行った。その結果, どのような良品学習が効果的であるかは, 検出したい異常の性質によって異なるという点を確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
当該年度においては, 外部駆動型視覚注視を実装する上で, ディープニューラルネットワークの全ての中間層へ導入し, その結果を検証した。しかしながら, どの中間層に本技術を導入するべきかは, 検出したい異常の特性や訓練データの性質にも依存すると思われる。そこで次年度は, 外部駆動型視覚注視を導入して最大の効果が得られる中間層を, ニューラルネットワークのパラメータと合わせて訓練時に推定する仕組みを確立することを目指す。さらに, 提案技術では, 他の良品学習を行った学習済みニューラルネットから出力した異常マップを, 視覚注視機構を通して異常検出ネットワークに与える。これは, 異常検出の工程全体を自動化するための戦略であるが, 一方で人がインタラクティブに外部駆動型視覚注視を制御する戦略も, 外観検査を導入する現場では有用な技術になるという着想に至った。次年度以降は, インタラクティブな視点誘導に, 本技術を活用する方向でも研究を推進する。
|