研究課題/領域番号 |
22K12194
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
道法 浩孝 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (90457408)
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研究分担者 |
信川 創 千葉工業大学, 情報科学部, 教授 (70724558)
西村 治彦 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 特任教授 (40218201)
高橋 哲也 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 協力研究員 (00377459)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ADHD / 非線形制御 / 軌道領域減少法 / カオス-カオス間欠性 |
研究実績の概要 |
本研究では,注意欠如・多動症(ADHD) の神経基盤である前頭野とドーパミン・ノルアドレナリン神経系における神経活動の非線形ダイナミクスに着目し,NF法・脳刺激法がADHDの神経基盤にどのような影響を与えるのかをモデルシミュレーションで検証する.さらに,その知見と我々が提案したカオス制御法(軌道領域減少法(RRO 法))を駆使することで,より治療効果を高める新たなNF法・脳刺激法を提案することを目的とする. これまで我々は,Baghdadiらによって示された前頭野と感覚野のニューロン集団で構成されるニューラルネットワークにおいて,ADHD患者の異常な注意状態の挙動に対応するカオス-カオス間欠性への遷移に対し,RRO法がその抑制に機能することを確認してきた.令和4年度は,このモデルを前頭野,視床下部及びドーパミン神経系を構成する大脳基底核で構成されるニューラルネットワークに拡張したShabestariモデルに対して,RRO法によるカオス制御を適用し,脳神経活動の安定性に対する有効性の検証を行った. 具体的には,まず,Shabestariモデルを構成する複数のパラメータを広範囲に変化させて挙動解析を行い,先行研究との整合性を確認した.次に,分岐・挙動解析を通して,ADHDにおける神経挙動に対応するカオス-カオス間欠性を呈するパラメータ領域を特定するとともに,前頭野神経活動の写像構造を明らかにした.さらに,RRO法を適用してフィードバック制御信号と微弱な外部入力信号を印加し,外部入力信号と前頭野の神経活動との相関係数及びリアプノフ指数に基づき,その効果を分析した.その結果,適度なフィードバック信号強度,微弱入力信号の振幅と周期に対して,カオス共鳴現象が誘起され,カオス-カオス間欠性を呈していたネットワーク挙動が,微弱外部入力信号に対応した周期的な挙動に遷移することが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前頭野と感覚野で構成されるADHDモデルを,前頭野,視床下部及び大脳基底核で構成されるニューラルネットワークに拡張し,軌道領域減少法が,カオス-カオス間欠性を呈する脳神経活動の安定化に機能することを,確認することができた.しかし,ドーパミン・ノルアドレナリン神経系を追加した全脳的なスパイキングニューラルネットワークを構築してADHD の病理パラメータ領域を特定するまでには至らなかったため,研究は,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
ShabestariモデルをADHD の神経基盤である前頭野とドーパミン・ノルアドレナリン神経系により構成された全脳的なスパイキングニューラルネットワークに拡張し,分岐・カオス解析を通して,ADHD の病理パラメータ領域を特定するとともに,神経活動の写像構造を明らかにする.次に,従来のNF法・脳刺激法のメカニズムを分析し,神経ネットワーク活動への影響を明らかにする.さらに,上記で特定した病理パラメータ領域における神経活動のカオス-カオス間欠性を抑制するRROフィードバック信号の設計を行い,NF法・脳刺激法の最適化を図っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で学会及び研究打合せがオンラインで実施されたため,旅費の支出が発生しなかったこと,及び本研究課題遂行に必要な性能を有するワークステーションを,当初見積額よりも安価で購入できたため,次年度使用額が生じた. 令和5年度は,従来通り対面での学会開催がほとんどとなるため積極的に国内外の学会に参加し,昨年度分も含めて成果発表を行う。
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