研究課題/領域番号 |
22K12198
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
本多 克宏 大阪公立大学, 大学院情報学研究科, 教授 (80332964)
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研究分担者 |
生方 誠希 大阪公立大学, 大学院情報学研究科, 准教授 (10755698)
野津 亮 大阪公立大学, 大学院現代システム科学研究科, 教授 (40405345)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 協調的データ解析 / ファジィクラスタリング / 説明可能なAI / マルチビューデータ分析 / マルチソースデータ分析 |
研究実績の概要 |
本研究では,多モード・多ソースのデータ分析に基づくデータ構造表現の開発と,説明性の高いAIへの組み込みに主眼を置き,協調的ファジィシステムにおけるプライバシー保護演算の導入やファジィIf-Thenルールベースの可用性の向上を目的としている.初年度は主に理論的側面からの展開として,以下の成果を上げた. (1) ニューロ学習モデルにファジィIf-Thenルールを組み込んで説明性能を向上させたANFISモデルの高度化として,前件部メンバシップの算出におけるノイズや欠測値の処理モデルを開発した.改良型のファジィクラスタリングに基づくメンバシップ関数の推定の有効性を確認した.これらの成果について,2件の国際会議発表と2件の国内学会発表を行った. (2) マルチビュー・マルチソースデータ解析における安心・安全なデータ活用を目標に,ファジィ局所的データ解析における連合学習モデルを開発し,可用性の改善されたメンバシップ関数の推定が可能となることを示した.これらの成果について,1件の国内学会発表を行った. (3) (1)や(2)で開発した理論モデルを実データへ適用する際のモデル改良を視野に入れて,局所的データ解析への組み込みを通した協調フィルタリング推薦システムの精度向上手法や要素ごと外れ値の処理機構を導入した楕円体状クラスタリングによるANFISの前件部メンバシップ関数の推定法を考案し,2023年度に開催されるIEEE国際会議における2件の発表の採択に至った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主に理論的側面からの展開を図った初年度としては,当初の研究の目的をおおむね達成する成果を得た.以下に,個別の課題における達成状況を述べる. (1) 説明可能性の高いAIの前件部構築にかかる課題では,改良型のFCMクラスタリングの活用により,ANFISモデルにおいてノイズや欠測値を処理するアプローチを確立した.これらの成果は,当初の目的である実応用を指向したデータ駆動型ファジィシステムの実現可能性を高めたものであり,想定した目標をおおむね達成するものであった. (2) マルチビュー・マルチソースデータ分析にかかる課題では,教師あり学習で活用が進んでいる連合学習モデルを教師なし学習のファジィ局所的モデリングに応用するアプローチを確立した.協調的ファジィシステムにおけるプライバシー保護演算の導入への道筋をつける成果であり,想定した目標をおおむね達成するものであった. (3) その他の展開としては,ANFISの前件部メンバシップ関数の推定に楕円体状クラスタリングを活用するモデルを提案し,その有効性を示すことができており,実世界の多様なデータ分布への展開も期待されることから,目標とするレベルをおおむね達した成果が得られたといえる.
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今後の研究の推進方策 |
当初の想定通り,第2年度以降は,理論的・応用的側面の両面について展開を図る.理論的側面については,初年度に開発した改良型のANFISモデルをANFIS識別器へと展開することにより,教師あり・教師なしの両面から説明可能性の高いニューロファジィ学習器の開発を目指す.また,ANFISモデルに連合学習機構も併せて導入することで,プライバシー保護に配慮した協調的ファジィシステムとしての有効性を向上させる. 一方,応用的側面については,コンテンツ評価データや環境汚染物質データの分析への適用を視野に入れ,実証実験を計画している.協調的ファジィシステムの新たな活用分野の開拓を目指す試みとして,実用性の検証に適した応用展開が期待できる. そのほか,第3年度に向けては,開発した分析モデルを組み込んだアプリ開発などへの拡張も視野に入れ,基礎データの収集などを行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度内に掲載・発表を計画していた雑誌論文・国際会議について,査読日程の遅れや投稿分野の変更により2023年度に後ろ倒しされる見込みとなったため. また,理論的検証に用いるデータの容量が比較的に軽微に抑えることができ,既存のパーソナルコンピュータの援用が可能であったことから,新規の購入を2023年度に延期したため. 2023年度に掲載・発表する雑誌論文・国際会議の経費や,大規模データのシミュレーション用の物品購入費として使用する.
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