研究課題/領域番号 |
22K12219
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
原田 利宣 和歌山大学, システム工学部, 教授 (80294304)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 形成外科手術 / 深層学習 / 顔面形状 / 曲線(面) / 曲率プロファイル / 手術用テンプレート / 顔面再建 / 性徴 |
研究実績の概要 |
顔面再建や性徴の変更を目的とした形成外科手術では,男性/女性として自然な顔に見える整容性という観点が重要である.しかし,医師の熟練度によって術後の顔面形状の完成度が大きく左右される問題がある.よって,男性/女性として自然な顔面形状を形成するためにその特徴や各部位の関連性を分析することは有用である. そこで,本研究は,さまざまな人種の顔断面における曲線を分析することで,人が男性/女性らしさを感じる顔面形状の特徴,さらに人種を超えた男性/女性らしさに共通する特徴を解明することを目的とした. 令和4年度は,日本人とアメリカ人の20代男女の顔面を計測し,顔面形状の3次元モデルから対象部分の断面画像を各人100枚生成した.次に,生成した断面画像を入力とし,性別と人種を教師信号とした畳み込みニューラルネットワーク(以下 CNN)を学習させた.さらに,学習済みの CNNが獲得した特徴を Grad-CAMを用いて視覚化し,特徴部分に対する曲線の分析を行った.その結果,鼻尖の尖った形状,目頭から眉弓にかけての隆起,下唇の丸みが男性的特徴であること,瞼から眉弓にかけての丸み,顎の丸みが女性的特徴であることが明らかとなった.ここで,本年度の研究では日本人を含めたアジア人,白人,黒人であったが,実験対象者の各人種における計測人数に偏りがあったといえる.今後はさらに作成したモデルの精度を向上させるため,アジア人以外の人種の顔面計測データを増やすとともに,CNNの学習方法を見直す予定である.なお本研究は,感性工学会への査読付き論文への投稿準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アメリカ Northwestern 大学での顔面計測も,コロナ禍の中,一時中断もあったが,現在は比較的順調に進んでいるため.また,顔面の中心線や主要な断面線の自動描画システムもほぼ完成している.さらに,CNN が獲得した特徴部位を Grad-CAMを用いてヒートマップで視覚化するシステムも開発が進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は,Northwestern 大学においてさまざまな人種のアメリカ人の顔面計測をさらに進める予定であり,またCNNでの分析も引き続き行う予定である.さらに,目,鼻,口,額などの形状が異なる顔面部位サンプルを作成し,そのサンプルに対するバランス(整容性)に関してアンケートを行い,それらに影響を与える部位,および部位間の関係を定量化,体系化(タイプ分類)する予定である.これについては自動で数千のサンプルを自動生成するシステムの開発にすでに着手している.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 令和4年度にデスクトップPCを購入予定であったが,ビデオカードの変更で,なんとか顔面形状の断面線抽出が可能であったため,購入を先送りした.そのため百十数万の残額が生じた. (使用計画) 令和4年度の残額と令和5年度の予算50万を合わせた約165万の内訳として,学会発表・調査旅費に30万,謝金30万,PCの購入費45万×2台,論文投稿・掲載費15万ほどを予定している.
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