研究課題/領域番号 |
22K12227
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研究機関 | 十文字学園女子大学 |
研究代表者 |
小林 三智子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (20153645)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 味覚感受性 / 苦味 / 苦味強度 / 嗜好性 / 緑茶 |
研究実績の概要 |
2022年度は、主として緑茶の苦味成分と味覚感受性の関係について検討した。 (1)煎茶の抽出方法の検討:3つの異なる抽出方法を用いた、煎茶の順位法の結果から、水出し煎茶、または冷却煎茶のうま味と煎茶に対する総合評価が有意に好ましいと判断された。水出しは、低温長時間抽出するので、操作ミスしにくい。また、低温で風味を守る上に、カフェインが抽出し難いため、煎茶にカフェインを添加し、苦味を調整することが可能となる。高級茶において、低い温度で水出し方法を用いて抽出した煎茶では、うま味を評価しやすいという報告がある(久保,2014)。水出し方法は、苦味以外の風味表現を最大化する上、カフェイン含有量を抑えることができると考えられる。苦味は煎茶の官能評価の重要な項目である。水出し煎茶を用いたカフェイン調整の煎茶における、共通作用を明らかにできる可能性がある。 (2)機器分析:味認識装置の結果から5つの煎茶には、特に渋味の先味と後味に大きな違いがあった。本実験では、塩味センサーは煎茶の産地による違いを区別した。しかし、実際に煎茶を味わうと、特に塩味の感知はしない。今後は煎茶として塩味センサーの作用を明らかにするために、煎茶味の変化が塩味センサーに与える影響を検討しなければならない。 (3)官能評価:カフェインを使用し試料の苦さを調整した。TI法を用いて、カフェインの添加により、苦味の変化を確認した。0.01%と0.02%カフェインをそれぞれ添加すると、確かに煎茶の苦さを調整できる。TDS法とTCATA法の結果から、カフェインの添加により、うま味の感じ方が変わった。渋味の感覚が強くなり、10秒までは口中で味わうと苦味が感じ易くなった。一方、うま味が感じ難くなり、感じる時点が遅くなった。後味の渋味(10秒後)が感じ易く、口中に残る時間が長くなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、飲料のうち主に緑茶を中心に検討した。まず、緑茶の抽出方法の検討を行い、HPLC及び順位法の官能評価から、水出し煎茶が最もカフェイン量が少なく、有意に好ましい味という結論を導き出すことができた。これにより、測定に用いる緑茶の抽出法を確立することができた。 また、味認識装置を用い、味の定性分析を行った。その結果、測定に用いた5つの煎茶には、特に渋味の先味と後味に大きな違いがあることを認めた。産地により、緑茶の味に差異がある事を認めた。 さらに、官能評価法には動的官能評価を用い、味の時間的変化を検討した。飲料の苦味の場合には、飲んだ瞬間の味だけではなく、後味も重要なものと考えられるので、この時間変化による苦味強度の変化を測定することは重要である。その結果、カフェイン添加により渋味の感覚が強くなり、10秒までは口中で味わうと苦味が感じ易くなった。一方、うま味が感じ難くなり、感じる時点が遅くなった。後味の渋味(10秒後)が感じ易く、口中に残る時間が長くなる事を認めることができた。 以上、今年度、緑茶についてHPLC、味認識装置、動的官能評価による結果の関連性を検討することができ、研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度において、緑茶についてはおおむね計画通りの研究を遂行した。 2023年度は、当初の予定通り、飲料のうちコーヒーについて、その苦味成分と味覚感受性の関係を検討する。 まず、コーヒーの抽出法を緑茶と同様に検討する。抽出した成分については、HPLCで確認する。抽出法を確立後、カフェイン添加量を検討する。 また、焙煎度と苦味の濃さについて検討する。 味認識装置と動的官能評価法を用いて、コーヒーの苦味と味の濃さの関係、味認識装置で示された味質と官能評価の関係を検討する。 最終的には、飲料の苦味成分と味覚感受性の関係および苦味強度と嗜好性に関する課題を遂行できるように、研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、学会出張を3回分予定していたが、すべてオンライン開催となり旅費300,000円を使用しなかった。また、味認識装置のセンサーの交換の必要がなく、その分の経費を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。 2023年度は、この費用について、札幌、京都、広島での学会発表、また、味認識装置のセンサーの交換、HPLCのカラムの購入などに使用する予定である。
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