研究課題/領域番号 |
22K12245
|
研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
原田 耕治 豊橋技術科学大学, IT活用教育センター, 准教授 (40390504)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | HIV / エイズ / 数理モデル / 変異原 / 免疫チェックポイント阻害剤 |
研究実績の概要 |
現在HIV/エイズ医療においては、HIVの薬剤耐性化を回避できる治療法の実現が強く求められており、ウイルス自壊誘導による抗HIV-1療法(致死的突然変異生成法)は有望です。その理由は、この治療法で薬剤に当たる核酸類似物(変異原)が、HIV RNA複製時にランダムに取り込まれることでHIV遺伝子を破壊するため、薬剤耐性化を起こしにくいからです。本研究では、変異原の耐性化に強い特長を生かしつつ、変異原に足りない抗ウイルス活性を補強 /増強するため「免疫チェッ クポイント阻害剤との併用をします。免疫チェックポイント阻害剤はHIV感染者に対して安全であり、抗ウイルス免疫応答を回復させる可能性があることが示されています。また、HIV潜伏感染を持つメモリーCD4 T細胞におけるPD-1の発現が、潜伏ウイルスの主要な供給源となっていることが確認されています。このため、ICIsを用いた治療がHIVの機能的治癒に向けた有望なアプローチとされています。
免疫チェックポイント阻害剤と変異原の働きを模したパラメータを導入し、HIV-1感染・複製過程を再現する数理モデルを構築し、コンピュータシミュレーション実験により免疫チェックポイント阻害剤の効用がHIVの治癒条件にどのように関係するのかを検討しました。シミュレーション実験の結果、変異原存在下で免疫チェックポイント阻害剤の働きを強くすると、一時的にHIV感染細胞の数を急激に減らすことができますが、HIV感染細胞がゼロになる完治状態に至らず、その後、細胞傷害性T細胞数とHIV感染細胞数が交互に増減し、振動状態に至ることを明らかにしました。この結果は単純に免疫チェックポイント阻害剤の働きを強くすれば体内からHIV感染細胞を除去できるわけでは無いことを示しています。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では、変異原存在下で免疫チェックポイント阻害剤の働きを強くすることで、細胞傷害性T細胞を活性化し、HIV感染細胞数をゼロに持っていけることを想定していたが、シミュレーション実験の結果、HIV感染細胞数はゼロにはならず、振動することが明らかになり、その原因を分析する必要が生じたため。
|
今後の研究の推進方策 |
シミュレーション実験により、変異原存在下で免疫チェックポイント阻害剤の働きを強くすると、一時的にHIV感染細胞の数を急激に減らすことができるが、HIV感染細胞がゼロになる完治状態に至らず、その後、細胞傷害性T細胞数とHIV感染細胞数が交互に増減し、振動状態に至ることを明らかにしました。今後はこの振動を引き起こす原因を分析し、抗HIV効果を最大化するための免疫チェックポイント阻害剤の活用について検討します。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画での想定と異なる結果が出てきたため、その原因分析が必要となり研究の進捗が遅れたため。
|