研究課題/領域番号 |
22K12251
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
吉野 公三 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (10358343)
|
研究分担者 |
猪山 昭徳 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター, 研究員(移行) (40645313)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | パーキンソン病 / 睡眠時無呼吸障害 / 脳波 / 心拍数 / 睡眠段階 / 自律神経 / 睡眠ポリグラフ / 非運動症状 |
研究実績の概要 |
本研究は,パーキンソン病(PD)に併発する睡眠関連疾患の病態生理を睡眠時生理信号データの数理解析に基づいて明らかにすることを目的とする.今年度は,(1)睡眠脳波状態空間内の5秒間スケールの遷移速度を解析した.その結果,いずれの睡眠段階においても, 遷移期の脳波空間内の状態遷移速度は安定期に比べて統計的有意に速かった.中途覚醒段階では安定期, ノンレム1睡眠段階では遷移期と安定期ともに,レム段階ではレムに遷移した直後の遷移期において,睡眠時無呼吸症候群(SAS)のあるPD患者群の遷移速度がSASのある非PD患者群よりも統計的有意に遅かった. 以上より, SAS患者の睡眠脳波状態空間内の状態遷移速度にPDが影響を与える相は中途覚醒, ノンレム1,レムの各睡眠段階間で異なることが明らかとなった.(2)次に,閉塞性呼吸イベントに対する心拍応答に影響を与える要因として,新たにSpO2低下量の影響を解析した.SpO2低下量は心拍応答に影響を与えるものの,層別に解析した結果,各最低SpO2値レベルにおいて,SASのあるPD患者群の心拍応答量はSASのある非PD患者群に比べて統計的有意に低かった.次に,臨床特性とともに覚醒反応,睡眠段階,SpO2低下量の要因を同時に調整した数量化I類分析の結果,PDの有無の偏回帰係数は統計的有意であることを確認した.さらに,ロジスティック回帰モデルを構築してPDの有無の判別を試みた.その結果,交差検証判別的中率は82%であった.以上より,覚醒反応,睡眠段階,最低SpO2値は閉塞性呼吸イベントに対する心拍応答量に影響を与えるが,これらの要因を調整してもSASのあるPD患者の心拍応答量はSASのある非PD患者よりも低いことが明らかとなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
睡眠時無呼吸症候群のあるパーキンソン病患者群と非パーキンソン病患者群との間の睡眠時生理信号の変動パターンの違いを解析できたため.
|
今後の研究の推進方策 |
パーキンソン病患者と睡眠時無呼吸症候群患者の心拍変動,脳波データ,気流データ,筋電図等の睡眠時生理信号データの詳細な解析をさらに進めるとともに,生理信号の変動パターンを用いた睡眠時無呼吸症候群のあるパーキンソン病患者群と非パーキンソン病患者群の判別モデルを構築する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究を遂行する上で,実際の使用額が当初の使用見込み額と異なったために残額が生じた.具体的には,得られた成果をもとに複数本の英語論文を今年度中に執筆する予定であったが,執筆を完了できなかった.このため,使用予定であった論文投稿料と英文校正費を今年度使用しなかった.研究計画自体に変更はなく,次年度は今年度の残額を含めて,当初の使用計画通りに研究を進める.次年度は,これまでの研究成果の発信のために,英文校正費,論文投稿料,学会出張旅費,学会参加費に主に予算を使用する.
|