研究実績の概要 |
被験者は,転倒経験のある高齢者2名を対象とし、個人属性の調査と転倒恐怖感の調査尺度であるModified Fall Efficacy ScaleおよびPhysical Self Efficacy Scaleの調査を行った.また、精神生理学的な恐怖感の測定として心拍変動の測定を行った.本研究では転倒場面として,荷物に囲まれた畳部屋,廊下と畳部屋の段差,廊下の曲がり角,玄関の上がり框の段差という4つの場面を想定してメガソフト社製VRソリューションを使用してVR画像を作成した.転倒場面VRの提示には,Oculus 社製のVRゴーグル(Irvine, CA)を使用し,VR提示による測定は,VRゴーグル未装着での開眼安静立位状態(安静立位条件),VRゴーグル装着で転倒場面でないモデルルームのVR場面の視聴(非転倒VR条件),そして転倒場面VRの視聴(転倒VR条件)の3条件で実施した.VRゴーグルを装着して転倒場面VRを見せたところ,非転倒場面ではないVRと比較して,両者が共通してその場で興奮して動くことができないといった恐怖感を惹起することがわかった.実際,心拍変動の解析においても交感神経活動の活性化が認められ,強いストレスを受けていることが明らかとなった.次に,VRゴーグルを装着して転倒場面VRを見ながら心拍変動BFによるリラクゼーショントレーニングを実施した.心拍変動BFには心拍コヒーレンス法を適用し,呼吸コントロールによって心拍のコヒーレンス(一貫性のある変動の程度)を被験者へ聴覚によりリアルタイムにフィードバックするHeartMath社製emWaveを使用した.この心拍変動BFトレーニングにて恐怖感の軽減を試みた結果、主観的・心拍変動データの解析結果と転倒恐怖感尺度の変化から転倒恐怖感に対するストレス軽減効果を確認した.今後は対象者を増やして検証したいと考えている。
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