研究課題/領域番号 |
22K12282
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研究機関 | 奈良学園大学 |
研究代表者 |
辻下 守弘 奈良学園大学, 保健医療学部, 教授 (80280197)
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研究分担者 |
登尾 啓史 大阪電気通信大学, 総合情報学部, 教授 (10198616)
小枝 正直 岡山県立大学, 情報工学部, 准教授 (10411232)
大西 克彦 大阪電気通信大学, 総合情報学部, 教授 (20359855)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 転倒恐怖感 / バーチャルリアリティ / 高齢者 / 心拍変動 / 脳波 |
研究実績の概要 |
令和5年度は、VRによる転倒体験が高齢者の脳波や心拍変動(HRV)に及ぼす影響を明らかにするとともに、呼吸法が転倒恐怖症の軽減に及ぼす影響を検証することで、転倒恐怖症の発症メカニズムを解明することを目的として研究を進めた。新たに、VR転倒体験システムを開発した。本システムは、Unreal Engine ver. 5を用い、HMDにはMeta Quest2を用いた。仮想空間は庭付きの一般的な日本家屋内とし、和室には畳を敷き、テーブルと座布団を配置した。初期画面には転倒体験開始ボタンが配置され、HMDのコントローラーで押すと体験が開始される。HDMのスピーカーから誘導の指示が流れ、それを頼りに和室の端まで進む。和室の端から廊下のマークまで進むと、受験者は自動的に段差を踏み外し、庭に転落する。落下後、庭にうつぶせになって体験は終了し、体験終了後は落下シーンのリプレイ映像が自動的に再生されるようにした。 生理心理学的評価として、オールインワンの脳波計測ヘッドセットを使用し、8つの周波数帯域における相対パワーを算出した。脳波データは被検者によって大きく異なるため、性別と年齢を調整した健常者の脳波データを用いて標準化を行った。また、HRVは、同じ脳波計測ヘッドセットに内蔵されている光電式容積脈波センサーを用いて測定した。HRVの解析には、心拍間隔のポアンカレプロットとデトレンドゆらぎ解析(DFA)のフラクタル特性を用いた。 本研究では、4名の高齢者を対象に計測と解析を実施した。その結果、脳波ではVR体験中にα波とβ波のパワーが低下する傾向がみられ、被験者が精神的ストレスを受けていることが示された。HRVではVR体験中にポアンカレプロットで交感神経活動がみられたが、DFAでは交感神経活動の低下がみられた。今後は、このような転倒恐怖感を緩和する呼吸バイオフィードバック療法を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基本となる転倒体験VRシステムはほぼ完成し、その体験が転倒恐怖感を惹起させることも確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度においては、完成させた転倒体験VRシステムを用いて転倒恐怖感を高齢者に惹起し、呼吸バイオフィードバック療法による転倒恐怖感の緩和を試みることで、最終的にはVR曝露療法の効果を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和6年度が研究最終年度であり、令和5年度に作成した転倒体験VRシステムのバージョンアップと呼吸バイオフィードバック療法の実施および国際学会での発表に必要な経費となる。
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