研究課題/領域番号 |
22K12295
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
高橋 亨輔 香川大学, 創造工学部, 准教授 (60647262)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | レジリエンス / FRAM / 機能共鳴分析手法 / Safety-II / 学習支援 |
研究実績の概要 |
本研究ではレジリエンス工学に基づく安全なシステム設計・構築支援の実現を目指す.具体的には,工学系の学生や実務家などのFRAMの初学者が,FRAMを用いたシステムモデリングや安全性分析を学習するための支援環境を構築する. 2023年度は,研究項目3)のFRAMモデルを評価・検証できるモデル評価手法の開発に取り組んだ.従来のFRAM分析支援ツールは,モデル作成を支援するものが主であり,FRAM分析者間でのFRAMモデルの相互理解を支援するには不十分であった.そこで,ペトリネットの考え方を参考にFRAMモデルにおける変動の流れの一時的な状態を確認できるFRAM評価モデルの開発に取り組んだ. ペトリネットは,離散事象システムの振る舞いを視覚的にモデル化する手法のひとつである.ペトリネットはシステムを二部有向グラフとして表し,システムの事象をプレース,事象間の関係をアークとして表現する.プレースにはシステムの現在の状態を表すトークンが配置されており,トークンがプレース間を遷移する過程を示すことで,システムの現在の状態が視覚的に記述される.本評価モデルでは,FRAMの機能をペトリネットのプレース,機能間の結合をペトリネットのアークと考えて,FRAMの機能の出力の推移をペトリネットのトークンの遷移のように表現する.これにより,FRAMモデルにおいて変動が機能間を伝播する様子や,FRAMモデルの具体例(インスタンス)における,ある一時的な状態を確認することが可能となる.開発したモデル評価手法の妥当性を検証するため,地震発生時の教職員の初動対応のFRAMモデルや建設業における墜落災害のFRAMモデルなどに適用した. この成果は2024年度に国内シンポジウムや国際会議において発表予定である.また,研究協力者と共に取り組んだ,建設業におけるFRAMの活用事例は,国内の査読付き論文誌において発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では次の4つの研究項目を設定している:1) FRAMモデルの作成・分析を支援するWebベースのモデリングツールの開発,2) 初学者がガイドに従いFRAMモデルを作成するための分析事例の蓄積と類型化の実施,3) 作成したFRAMモデルを評価・検証できる定量的なモデル評価手法の開発,4) FRAMモデルの作成演習を通じたモデリングツールの有用性の検証. 本年度は,前年度に未確定であった研究項目3)のFRAMモデルを評価・検証できるモデル評価手法の開発に取り組んだ.本年度の取り組みの結果,モデル評価手法が確定した.次年度が研究の最終年度となる.現在,最終的なモデリングツールの実装が残っているものの,モデル評価手法が確定し,モデリングツールの有用性の検証が実施できる見通しがたったことから,おおむね順調に進展していると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は3年間の予定である.研究の最終年度である2024年度は,Webベースのモデリングツールを実装し,FRAMモデルの作成演習を通じてモデリングツールの有用性を検証する. 2023年度に既存のFRAMモデリングツール(FRAM Model Visualiser:FMV)のソースコードがGitHub上で公開されたことより,Webベースのモデリングツールには,既存ツールの活用も検討する.研究項目3)のモデル評価手法は,現在,グラフ構造を描画するDOT言語を用いて,FRAMモデルの機能の出力の推移を可視化するツールを実装している.現在の実装ではFRAMモデル上での機能の出力の推移をシミュレーションができないことから,2024年度は本評価モデルに基づくシミュレーションツールを開発する. 最終的には,研究項目2)で作成したFRAMモデルの分析事例と研究項目3)のモデル評価手法による評価事例を示すことで,FRAMのモデリングや分析事例をまとめる.これらのFRAM分析の流れやツールの使い方を示すことで,FRAMを用いたシステムモデリングや安全性分析を実施するための学習支援環境の構築を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度にWebベースのFRAMモデリングツールのシステム開発の外部委託費を計上していたが,開発を遅らせたため次年度以降の経費として計上したままである.2023年度に既存のFRAMモデリングツール(FRAM Model Visualiser:FMV)のソースコードがGitHub上で公開された.このため,Webベースのモデリングツールの開発は,既存ツールの活用も検討した上で,2024年度に実施する予定である. 研究項目3)の成果は2024年6月に国際会議(The 16th FRAMily meeting/workshop)において発表予定である.当初より予定していた国際会議発表であるが,昨今の円安事情のため外国旅費が当初予定よりも高くなっている.その他は,論文投稿用の経費として使用予定である.
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