研究課題
文部科学省はプログラミング的思考を「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか(略)といったことを論理的に考えていく力」と定義している.この力の育成には,①意図と動きの対応の理解,②動きと記号の対応の理解,が必要となると言える.そこで本研究では,デバイスオントロジーの知見を参考に,機能(意図),振舞い(動き),構造(記号)の3側面の対応付け支援を実現する.さらに,ここで獲得される機能・振舞いが結びついた構造を「部品」と呼称し,部品を高度化させるために拡張する手法を実現し,さらに個別診断・フィードバックを備えた学習支援システムを開発する.具体的には,学習者にある機能(意図する活動)を実現するための,構造(ソースコード)を構築させ,次に今構築したものを部品として,より大きな機能を構築させる,これを繰り返すことで部品を段階的に拡張させる手法を実現する.この際,学習者が構造の誤りを犯した場合,個別の構造の誤りについて,どのような振舞いになるか,またその振舞いではなぜ機能を実現できないかをフィードバックとして与える.2022年度は上記の目的に対して,次の3つのシステムを開発し,評価を行った.(1)学習者の構造(ソースコード)から振る舞い(実行結果)を推定するための学習支援システム,(2)(1)を部品単位で行うための学習支援システム,(3)学習者のコードをロボットの振舞いとして可視化することで理解を促進するシステム,の3つである.(1)については任意のコードを自動解析できる機能まで開発した.(1)(2)については研究室単位,(3)については授業実践を通してその効果を確認した.
2: おおむね順調に進展している
研究計画調書に記載の2022年度の予定「構造と振舞いの対応関係の学習のための機能の実装と実験室環境での実践」通りに行えた.さらに,構造から各行の実行順序を可視化する機能については,任意のコードからトレース課題(ある構造「コード」からどのような振る舞い「実行内容」が生成されるかを学習者に考えさせる課題)を自動生成する機能を実装し,研究室環境内での評価を行い,構造と振舞いの関係性の理解に貢献することを確認した.
現在,計画は順調に進んでいる.さらに,2022年度中に課題系列のためのシステムも一部開発できた.また,2023年度には中学校での授業実践も前倒しで実施できる計画を現在立てている状況である.ただし,異動に伴い,担当講義に変更があったため,大学生を対象としたプログラミングの講義での実践については,2024年度に行うように再調整を予定している.2024年度は同大学の他研究者と協力し,授業実践を行うことを予定している.
当初の予定ではコロナが収束することを前提に国内国際会議旅費として多く計上し,収束しなかった際は論文の別刷り代等に割り当てることを予定しておりました.事実,予定より別刷り代等に多く割り当てましたが,完全に割り当てることができず,一部差額が生じました.こちらは次年度以降の旅費等に割り当てることでより良い成果を出すことを予定しております.
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 4件)
電子情報通信学会論文誌D 情報・システム
巻: J106-D ページ: 110~122
10.14923/transinfj.2022LEP0013
巻: J106-D ページ: 132~143
10.14923/transinfj.2022LEP0015
巻: J106-D ページ: 144~155
10.14923/transinfj.2022LEP0024