研究課題/領域番号 |
22K12329
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
川村 暁 岩手大学, 情報基盤センター, 准教授 (40347919)
|
研究分担者 |
吉田 等明 岩手大学, 教育学部, 嘱託教授 (00220666)
劉 忠達 石巻専修大学, 理工学部, 助教 (00782533)
渡部 謙一 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (30360960)
牛渡 克之 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (50527166)
長谷川 正規 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (70540996)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 感性情報処理 / 楽器演奏者 / テンポ / 機械学習 / 深層ニューラルネットワーク |
研究実績の概要 |
楽器演奏者の楽譜(旋律)演奏におけるテンポや印象などの感性情報を得るため被験者実験を行っている.楽譜(旋律)は,本科研費およびJP18K11598の助成で構築した820旋律を用いた.被験者の楽器は吹奏楽器とピアノである.被験者8名が実験中である. これまでの被験者実験の結果をデータベース化し分析基盤を構築中である.実験が完了している12名のデータを入力した.集成されたデータに基づきクロス分析する際の指標について検討中である.データセットの元である楽譜の,作曲年代・作曲者・種別などを指標とした解析を行う基盤となる. このような,録音された音のデータセットでは無く,楽譜と感性情報処理の結果(楽譜と,楽譜を演奏したときのテンポ・好き嫌いなど)の対になったデータセットは特異である. これまでに集成した楽譜とテンポを用いて,数値化した楽譜からテンポのはやい・おそいを機械学習し学習に用いていない評価用の楽譜のテンポのクラスを模擬できるか計算機実験を行っている.ある楽器演奏者の推定したテンポをデータとし,前処理に自己符号化器を用いた深層ニューラルネットワーク(入力層1,中間層11,出力層1)とし,Optunaにより最適パラメータを検索した結果,学習用データの認識率は99.8%,評価用データの認識率は83.9%となった.引き続き,学習に用いていない評価用データの認識率の向上,および,他の被験者の推定したテンポのクラス分類について機械学習を行っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
楽器演奏者による楽譜(旋律)の感性情報処理結果を得るための学生の被験者実験は,コロナの影響もあり研究分担者の所属する大学の地域による影響などもあった(被験者実験が思うように進められない期間があった)が,概ね計画通りに進められている.制約条件があった中,被験者実験を進めることができた. なお,感性情報処理済みの演奏された音のデータベースは多数あるが,本研究で構築しているような楽譜(旋律)と感性情報が対応するデータベースは非常に特異である.今後,感性工学的な研究を進める上でも貴重なデータベース・データセットである. ある楽器演奏者が楽譜(旋律)を吹奏し推定したテンポについて,テンポのはやい・おそいを機械学習により推定する計算機実験では,学習用データ(数値化した楽譜):99.8%,評価用データ(数値化した楽譜)の認識率は83.9%となった.現在,他の被験者のテンポについて機械学習を行っているが,学習は99%以上成功するが評価用データの認識率は75%前後となっている.深層ニューラルネットワークやそのほかのニューラルネットなどを用いることで,認識率の向上を目指し計算機実験を遂行中である.
|
今後の研究の推進方策 |
楽器演奏者が楽譜(旋律)を演奏する際に行っている感性情報処理の結果である,テンポ・曲の好き嫌い・演奏難易度・曲の難易度・その他の印象についての,被験者実験を継続して実施する.これにより,楽譜(旋律)の感性情報処理に関するデータベース(データセット)を拡充できる.また,コロナが落ち着いたことから,被験者実験をより一層進捗させる. 感性情報処理のデータベース(データセット)について,元データである楽譜(旋律)の属性(作曲年代,曲の種別等)に基づくクロス分析を行う.被験者の感性情報処理結果は大きな差が見られるが,差に何らかの傾向が見られるか否かについて,データ分析の結果から考察する.楽譜の分析については音楽の専門の立場からの示唆を踏まえて分析項目を設定し分析する. 被験者が推定したテンポを計算機で模擬する計算機実験を引き続き行う.深層ニューラルネットワークや他の手法を用いること,最適な構成(アーキテクチャ)を検討するなどして,認識率の向上を図る.計算量が多いため,計算機資源を追加する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
被験者実験がコロナの影響(学内での課外活動禁止措置)などにより,楽器吹奏を伴う実験が出来なかったため,被験者実験の進捗に大きな影響があった. 2023年度は,2022年度の知見を生かし,被験者実験が円滑に実施されるように配慮する.
|