研究課題/領域番号 |
22K12343
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
押尾 晴樹 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (50749520)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リモートセンシング / 太陽光誘起クロロフィル蛍光 / 放射伝達モデル / 数値地形モデル |
研究実績の概要 |
本年度は、FLiES-SIFモデルを用いた太陽光誘起クロロフィル蛍光の衛星観測のシミュレーションを、前年度よりもケース数を増やして実施した。既存の研究で整備された様々な典型的な3次元森林景観データ(サバナ、温帯林、熱帯林など)を用い、入射光・観測の角度、葉面積指数、土壌反射率などを変動させて計算を行い、既存の標準化手法(植生指数などの一般的な衛星プロダクトを用いて太陽光誘起クロロフィル蛍光の観測値を植生キャノピー内の蛍光の総量に変換する方法)をテストした。その結果、およそ樹冠被覆率50%以上、葉面積指数1以上の森林では既存手法がある程度有効であることが明らかとなった(相関係数0.8以上、誤差20%以下程度)。森林がある程度以上密になれば既存手法の精度は一定になると予測されたが、非常に密な熱帯林ではやや精度が低下した。これは樹冠内での光合成有効放射の分布が複雑になり既存手法における仮定と異なる状況になるためとみられた。次に既存手法を実際の衛星蛍光データに適用した。TROPOMIの蛍光データを用いた。アマゾンの常緑広葉樹林において、観測角度が異なる2つのグループに分け、それぞれで蛍光観測値の時間変化を分析した。観測値は2つのグループで異なる時間変化を示したが、既存手法適用後は同様の時間変化を示すようになり、シミュレーションと整合的な結果が得られた。また実際の森林において標準化手法を検討するために、空間情報の整備を行った。当初は新たにレーザー計測を実施する予定であったが、より効率的に研究を進めることができるように既存の点群データやキャノピー標高データを入手して解析に用いることができるように整備した。植生キャノピーだけでなく地表面の標高データも本研究に資する高精度なものがなかったため、上記データから新たに作成するために敵対的生成ネットワークを用いた方法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたレーザー計測を行うのではなく、既存の点群データ(VIRTUAL SHIZUOKA)やキャノピー標高データ(AW3D)を用いることとした。レーザー計測は任意の時期に観測可能という利点があるが、高コストで観測可能範囲が限られる。既存データは観測時期を選べないという短所があるが、低コストで広域なデータが得られよりロバストな成果が期待できる。データ量が増えることで作業量も増えるが、高性能なパソコンを購入し処理を実施することでカバーしている。また、当初は点群データから植生キャノピーのボクセルモデルを作成し、地表面の標高については既存データを用いて計算を実施する予定であった。しかしながら、既存の標高データは低空間分解能で、地物が残る場合があるなど問題もあった。そこで、キャノピーの標高データから自動で地表面の標高データを作成できるように敵対的生成ネットワークを用いた方法を検討した。以上のように、当初の予定に比べてスムーズに進まなかった点もあるが適切に対処しており、地表面の標高データの生成に関する成果も得られており概ね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
シミュレーションのケース数をさらに増やし、既存の標準化手法が適用できない疎な植生域における改良と、バイアスが残る密な植生域における補正方法を構築する。また、実際の森林の3次元データの作成も継続して、そのデータと数値シミュレーションを用いて検証を行う。さらに実際の現象解析を行うことで手法の有効性を確認する。2023年に非常に高温であった地域など特徴的な気象条件であった地域の中で様々な植生の形態を対象とする。植生の3次元情報は既存の点群データや標高データから取得する。クロロフィル量など空間情報以外の計算に必要な情報は既存の方法で推定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
航空測量会社に計測を依頼する予定であったが、当初の申請額からの減額や予算内でより良い研究成果を出すというコストパフォーマンスの面を考慮して、一般的に利用可能な既存のデータを活用することとし、それを処理するためのコンピュータを購入した。そのため、研究はより効率的に進められるようになったが予算は当初の予定と多少差が生じた。この分は次年度にデータの追加購入や昨今の経済状況を考慮して成果発表のための旅費などに充てる。
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