研究課題
初年度である2022年度は中央熱帯太平洋マニヒキ海台で採取された海底堆積物コア(KR99-12 PC5)について氷期-間氷期スケールの堆積年代モデルの構築に注力した。PC5コアを2cm厚にカットした試料430層準から浮遊性有孔虫化石(Globigerinoides ruber, sensu stricto)を拾い出し、安定炭素・酸素同位体分析を行った。酸素同位体変動はコアの上部5mまでは0.6パーミル程度の振幅で変動し、氷期-間氷期サイクルの全球シグナルと変動パターンがよく類似していた。一方、5 mより下部(5-16 m)では周期的変動は見られるものの振幅が0.2-0.3パーミル程度と小さく、全球シグナルとは多少異なるパターンで変動した。そのため、酸素同位体変動を目視で標準カーブに対応させると、5 mより下部では不確実性が高くなるという問題が起こった。酸素同位体層序の精度を確保するために、2つの古地磁気年代で挟まれた層準について炭素・酸素同位体の周期解析を行い、両者の周期的変動が約0.3 mで約4万年の地軸傾斜角の周期に相当することを確認した。また、炭素・酸素同位体には負の相関関係があり、氷期-間氷期サイクルに起因する変動であることも確認された。4万年周期のバンドパスフィルタで得たシグナルを参考にして氷期-間氷期変動を標準カーブに対比させることで、信頼性の高い年代モデル構築に成功した。その結果、コア長16 mのPC5は最下部の年代が約2.2 Maであることが明らかとなり、氷期ー間氷期スケールの水温変動復元に適した堆積物コアであることが確認された。
2: おおむね順調に進展している
当初の目標であったPC5コアの年代モデル構築が予定通りに進めることができた。同位体分析の済んだG. ruberについて微量元素分析を行う準備が整い、表層水温変動の復元に取り掛かれる状況にある。
2023年度は、同位体分析が済んだG. ruberについて微量元素分析を行い、表層水温変動の復元を行うとともに、亜表層や水温躍層付近に生息する別の浮遊性有孔虫種の拾い出しも進める。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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