研究課題/領域番号 |
22K12347
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
小松 大祐 東海大学, 海洋学部, 准教授 (70422011)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 硝酸イオン / 窒素循環 / 安定同位体 / 沿岸環境 |
研究実績の概要 |
硝酸イオンの窒素酸素同位体比分析について、その測定精度の向上や定量下限の低減を目指し、従来法を見直した。硝酸イオンの窒素酸素同位体比測定では、 硝酸イオンをN2Oに変換し質量分析を行う。従来法ではN2Oの窒素酸素同位体比の測定精度に比べ、硝酸イオンのそれらは数倍悪化していた。測定精度低下の原因はN2Oへの変換過程にあり、 3種の硝酸イオン同位体標準物質の同位体比とそれらの測定値で作成する検量線のばらつきが大きいことが原因だった。変換過程のうち、亜硝酸イオンのN2Oへの還元時のpHのばらつきが検量線のばらつきの原因と考え、緩衝溶液を用いてpHを安定させた。 その結果、 18O の検量線の傾きについて既報の0.884 ± 0.023(n = 18)から0.914 ± 0.003(n = 7)に、 15N のそれを0.487 ± 0.002(n = 18)から0.491 ± 0.001(n = 7)に、 それぞれ再現性が向上し、硝酸イオンについて±0.2‰程度の精度で定量可能となった。また、従来法では試料の一部を装置に導入していたが、2重針を作成することにより瓶内の全試料を導入可能にした。これにより従来比のおよそ3.5倍の試料量の導入が可能となり、同位体比を定量可能な濃度の下限値を引き下げることができた。 定量法の改良と同時に、その定量法を環境試料へ応用するため、駿河湾で定期観測を開始した。駿河湾の清水港-土肥港間を結ぶ測線上に 13 地点を設け、Seabird社のSBE-55 ECOサンプラーを水深 240 m まで降下させ水温・塩分・蛍光強度データを取得し、6 層で採水を行った。1ヵ月から2ヶ月の間隔で同様の観測を行い、沿岸環境の窒素循環の季節的な変化やその変動要因を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に実施に実施予定だった定量法の改良に取り組み、硝酸イオンの窒素酸素同位体比の測定精度の向上と必要試料量の低減を達成できた。硝酸イオンからN2Oに変換する際のpH条件を見直すことにより、同位体検量線の傾き、切片を安定させることができ、硝酸イオンの15N、 18Oの測定精度を向上させられた。それぞれの再現性は±0.2‰程度である。また従来比のおよそ3.5倍の試料量の導入が可能となり、同位体比を定量可能な濃度の下限値を引き下げることができた。駿河湾を横断する測線を設け、13測点でおよそ水深250 mまでを定期的に観測し始めた。また、夏季と春季に駿河湾で15Nアンモニアを添加した硝化速度を見積もる培養実験を実施した。計画した内容を順調に実施できた一方、17Oの測定を実施するための反応炉に問題が生じ、硝酸イオンの17Oの分析は実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
自大学に構築した硝酸イオンの安定同位体分析を行う研究設備について、これまで施した従来法の改良点をまとめ、現状の測定精度、定量下限を示す方法論を示した論文を公表したい。また、改良法を応用し国際共同プロジェクトであるGEOTRACES計画で採取された一連の試料の分析を進める。また駿河湾で開始した定期的な断面観測について、今後、オートアナライザーにより各種栄養塩の濃度分析と硝酸イオンの安定同位体比分析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析に使用する超高純度ヘリウムボンベについて、供給が不安定かつ、価格も上昇の一途をたどり、発注のたびに価格が改定されている。いつ入荷するか分からない状況で、2022年度中に発注済みボンベの納入が2023年4月になってしまったため、次年度の使用額が生じた。
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