研究課題/領域番号 |
22K12351
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研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
渡邊 圭司 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 専門研究員 (50575230)
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研究分担者 |
須田 亙 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 副チームリーダー (20590847)
竹峰 秀祐 埼玉県環境科学国際センター, 化学物質・環境放射能担当, 専門研究員 (40512380)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 窒素循環 / 有機態窒素 / 河川 / アンモニア / 浮遊細菌 / ゲノム |
研究実績の概要 |
淡水圏(湖沼および河川)から純粋分離した浮遊細菌の中で、様々な系統群に属する30菌株を選び、次世代シーケンサーによる全ゲノム解析を行った。ポリヌクレオバクター属のサブクラスターPnecDに属するKF003株、リムノハビタンス属のbetI-Aに属するTEGF002株、TEGF003株およびINBF004株の4菌株を除き、26菌株については、完全な環状ゲノム配列を得ることができた。得られたゲノム配列については、国際塩基配列データベースに登録し、誰でも配列情報にアクセスできるよう整備した。また、既存の標準菌株とANIによる塩基配列の比較解析を行ったところ、その多くが新種候補であることが明らかとなった。これらの菌株のゲノム配列につては、これまでほとんど報告例が無いことから、国際誌上での発表を進めた。淡水圏における有機態窒素の化学組成を明らかにするため、HILICモードを利用したLC-QTofMSによる一斉分析法の検討を行った。測定モードにSWATH-MSを併用することにより、アミノ酸27物質、アミノスルホン酸(タウリン)、尿素、尿酸(プリンタ体)およびクレアチニンの一斉分析の最適化を行った。また、尿素を指標物質とした試料保存性の検討を行った結果、河川水を採取した後、1日の冷蔵保存で半量以上が微生物による分解により消失することが明らかとなった。採水後現場で直ちにろ過作業を行い冷蔵保存することで、1日後でも微生物の分解による消失を最小限に抑えることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでのところ、研究計画に沿って順調に研究が進んでいる。また、研究成果も着実に得られている。様々な系統群に属する浮遊細菌のゲノム解析を特に注力して進めたことにより、どの系統群にどのようなアンモニア化に関わる遺伝子(アンモニア脱水素酵素)が存在するのか明らかにすることができた。特に、バクテロイドータ門に属する細菌は、他の系統群と比較して多くの種類のアミノ酸脱水素酵素様の配列を、ゲノム上に保有していることを新たに発見した。
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今後の研究の推進方策 |
淡水圏に生息するフラボバクテリウム属細菌(Flavo-A3に近縁)の現存量の把握については、この系統群に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを設計し、カスタムオーダーにより購入した。今後は、このオリゴヌクレオチドプローブの特異性を検証し、実際の環境水(河川や湖沼)におけるフラボバクテリウム属細菌の現存量を明らかににする。また、ゲノム解析を行った様々な系統群に属する浮遊細菌の純粋分離株を使用し、各浮遊細菌がどのくらいの量の有機態窒素をアンモニアに変換するのか、そのポテンシャルを培養実験により実験的に検証する。また、環境水中の有機態窒素の化学組成およびその存在量を明らかにすることで、浮遊細菌を介した窒素循環の解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、浮遊細菌のゲノム解析を2年がかりで行う予定であったが、注力し初年度にほとんどの解析を終了した。代わりに、初年度に行う予定であった、各浮遊細菌がどのくらいの量の有機態窒素をアンモニアに変換するのかそのポテンシャルを評価するための培養実験が、後ろ倒しとなった。そのため、この分析に使用する予定であった消耗品費が次年度使用額として生じた。
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