研究課題/領域番号 |
22K12366
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
近藤 美由紀 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 主任研究員 (30467211)
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研究分担者 |
藤嶽 暢英 神戸大学, 農学研究科, 教授 (50243332)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 炭素循環 / マングローブ / 細根 / 土壌 |
研究実績の概要 |
熱帯から亜熱帯地域の汽水域に発達し、地球上で最もCarbon- richな生態系であるマングローブ林は、土壌中への炭素隔離機能が極めて大きいことから、その保全が温暖化抑止の低コストオプションと考えられている。マングローブ生態系の高い土壌炭素蓄積のメカニズム解明の向けて、土壌分画法と同位体分析を組み合わせ、土壌有機炭素の起源解析を行い、細根に起因する土壌有機炭素を定量化することを目的に、沖縄県石垣島の吹通川で採取したマングローブ林の土壌サンプル用いて、土壌の主要な構成成分である腐植物質の分画法の検討を行った。分解速度の異なる炭素プールとなる土壌画分法の検討として、化学構造解析における多分散性の減少のために開発された分子サイズ分画法の1つである、pH値の異なるNaPP溶液による逐次抽出法をマングローブ土壌(表層0-25cmで採取した試料の一部)で試行した。異なるpH(3、5、7、9、11、13)のピロリン酸溶液を準備し、約 1.0 g の炭素を含む土壌サンプルに、抽出剤 200 mL を添加し、室温で3時間震とうした後、遠心分離(10,000 rpm、15分間)により、抽出物と残渣を分離した。pH値を3、5、7、9、11、13の順に上げて順次繰り返したところ、概ね等量の6種類の画分を得られることが確認できた。植物遺体や様々な起源や生成過程を経た高分子物質群である腐植物質は、幅広い分子サイズ分布を持つため、腐植物質の多分散性の減少は化学構造をより正確に理解するために重要であり、同位体分析を用いた土壌有機炭素の起源解析を行う上でも有用な分画法となり得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの感染状況を加味しながら、密にならないような状態で調査や分析を行う必要があったため、ガブルマタ川での地形・毎木調査等が遅れていた。このため、土壌分画法の条件検討に使用する土壌の採取地点を検討するために必要となる土壌深度図や樹木位置図の作成が遅れていた。この結果、条件検討に適すると判断できる土壌試料の採取が遅れたため、本実験に使用する予定であった過去に石垣島吹通川で採取し、冷凍保存していた土壌コア試料の一部を使用し、土壌分画法の検討を行った。 昨年度9月に、共同研究先の複数の大学が集まり集中観測を実施し、ガブルマタ川のマングローブ林内のトラバース測量を行った。このデータの解析を進め、土壌深度図や樹木位置図の作成が行われている。
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今後の研究の推進方策 |
石垣島ガブルマタ川のマングローブ林内にて条件検討用に土壌を採取し、分解速度の異なる炭素プールとなる土壌画分法の検討を進め、本実験試料に適用する。分画された土壌の重量測定後、C/Nアナライザーで炭素および窒素含量を測定し、土壌有機炭素プール(各画分)を定量するとともに、炭素・窒素安定同位体分析を行う。加えて、土壌有機炭素の起源解析を行うため、エンドメンバーとなるマングローブを起源とする細根等について、炭素・窒素安定同位体比の分析を進める。これらの結果を用いてマンローブ土壌の起源解析を行い、マングローブ林の土壌中の巨大な炭素プールのうち我々がまだ評価できていない”missing C”の存在について、「“missing C”がマングローブの細根リターによる」という仮説を検証し、土壌深層での細根生産の高さを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの感染状況を加味しながら、密にならないような状態で調査や分析を行う必要があったため、ガブルマタ川での地形・毎木調査等が遅れていた。このため、土壌分画法の条件検討に使用する土壌の採取地点を検討するために必要となる土壌深度図や樹木位置図の作成が遅れていた。この結果、条件検討に適すると判断できる土壌試料の採取が遅れたため、本実験に使用する予定であった過去に石垣島吹通川で採取し、冷凍保存していた土壌コア試料の一部を使用し、土壌分画法の検討を行った。 昨年度9月に、共同研究先の複数の大学が集まり集中観測を実施し、ガブルマタ川のマングローブ林内のトラバース測量を行った。このデータの解析を進め、土壌深度図や樹木位置図の作成が行われており、本年度はこれらの情報を参照して土壌コア試料を採取し、表層だけでなく深さ50cm以深についても土壌分画法の条件検討を検討し、分画方法の最適化を進め、土壌有機炭素の起源について検討する。
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