研究課題
様々な条件下においてヒト細胞でDNAに誘発される変異誘発の頻度と変異スペクトルを解析することが可能な実験系の開発を行った。pNGS2 Barcode pDNA Library(NGSのSequencingエラーをBarcode解析で除くことが可能なsupF plasmid DNA library)を設計構築した。まず、DNA損傷による変異シグネチャーが特徴的な紫外線照射を用いた解析を行うことで新しい変異解析法としての検証研究を行った。また、その実験データから、新しい紫外線の変異シグネチャーを見出した(Kawai H., et al., eLife., 11:e83780 (2022))。次に、開発した方法を用い、Cs-137ガンマ線の持続照射条件下での変異解析を行った。構築したpDNA Libraryをヒト培養細胞に導入し、Cs-137ガンマ線の持続照射条件下(0, 1, 2 Gy/day)で、2日間培養した。細胞から抽出したpDNA Libraryについて、指示大腸菌株を用いて、変異誘発頻度をコロニーカウントで、変異スペクトルをNGS解析によって行った。更に、指示大腸菌を用いることなく、変異頻度と変異スペクトル解析を行ったところ、それぞれの実験において、ほぼ同程度の変異体頻度(10の-6乗bpオーダー)で、変異スペクトルが得られた。これらの実験結果から、指示大腸菌を用いることなく、高感度に変異スペクトル解析が可能であることが明らかとなった。また、行った実験結果から、現在用いているpDNA Libraryでは、解析配列の偏りが、変異シグネチャー解析する上で問題となる可能性が示唆された。そのため、新たに解析配列に偏りのないpDNA Libraryの開発を行うこととした。
2: おおむね順調に進展している
初年度は、変異シグネチャーが明確な紫外線照射を用いて、NGSによる高感度変異解析法を確立した(Kawai H., et al., eLife., 11:e83780 (2022))。また、確立した変異解析法を用いて、変異が低頻度で生じると考えられる低線量率γ線照射環境でのヒト培養細胞での変異検出が可能であることが明らかとなった。また、そのスペクトル解析から、低線量率γ線照射の変異シグネチャー候補を同定している。おおむね順調に進展しているものと考えている。
低線量率のγ線照射によって生じるクラスター変異が同定された。これまでに開発した実験方法では、変異シグネチャーに偏りが生じている可能性が示唆された。そこで、実験計画に従いつつ、NGS変異解析法を改良し、老化細胞によって誘発されるクラスター変異の誘発分子機構を明らかとすることを目的に研究を進める。
試薬の購入金額が予算を若干下回った。実験計画の遂行には影響がなく、次年度の実験計画に必要な試薬の購入に利用する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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