研究課題/領域番号 |
22K12395
|
研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
劉 暁輝 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (60596849)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ビスフェノール / エストロゲン受容体 / 転写活性化 / アゴニスト / アンタゴニスト |
研究実績の概要 |
ビスフェノールA(BPA)の代替物であるBPAF、BPC などの新世代ビスフェノールがエストロゲン受容体 ERに強く結合し、ERαではアゴニストとして、ERβではアンタゴニストとして異なって働く。本研究では、こうしたビスフェノールがER受容体を介した複雑なシグナル毒性をどのよう示すかを解明することが目的とした。 我々はこれまでの研究では、ER受容体のリガンド結合ポケットを構成する異なるアミノ酸残基について調べ、ERβをERαのものに置換し、新世代ビスフェノールによる転写活性を約50%まで回復させたことを判明した。したがって、新世代ビスフェノールの ERβでの特異な活性は、「ERβのビスフェノール結合サイトにおいて、ERαとは異なる構造がある」と結論付けられた。 3年計画の初年度である本年度は、まず、さらにERαと ERβの構造を網羅的に比較して、ERβ-アンタゴニストをアゴニストに機能転換する構造要因を究明することに取り組んだ。様々なERβをERαのものに置換した変異受容体のアッセイより、ERβの転写活性を100%に回復させる構造要因を判明した。以上の結果より、(1) ER受容体のヘリックス11(H11)とH12 間の静電結合によるH12のアゴニストコンフォメーションの安定化の効果、 (2) N端に存在するActivation Function 1 (AF1) とC端のリガンド結合ドメイン(LBD)の間の相互作用・結合が、アゴニストリガンドのERβへの結合に決定的に重要である。一方、LBDに結合するN端ドメイン(NTD)の部分構造の同定を行った。令和4年度では、ERαについて実施し、NTDの2カ所にAF1構造が存在することが初めて明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、計画通りにほぼ順調に進展している。 2015年に発表されたクライオ電子顕微鏡法を用いたERα/DNA 結合構造では、NTDとLBDが隣接して相互作用・結合していることが明らかになり、ERβついても同様の構造が推定された。先述のように、ER受容体のリガンド結合ポケット以外の異なるアミノ酸残基・構造について、ERβをERαのものに置換し、100%の転写活性を回復させる構造要因を明らかにすることができた。これにより、本研究の第一の重要な目的達成に向けて、大きく前進することができた。また、ERαにおいて転写活性化の重要な構造要因であるAF1がN端ドメインに2ヵ所存在することが見出された。 以上のように、本研究は全体的におおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の研究を引き続き推進し、まず、ERβの機能転換する構造要因が機能発現に果たしている役割について、X線結晶構造を用いてドッキングモデリング計算による検証を行う。一方、ERβにおいても、ERαと同様にAF1の同定を行い、AF1がmRNA転写活性化における役割を解明すると共に、ビスフェノールによるER受容体を介したこれまでにないシグナル毒性・内分泌撹乱作用の分子機構を解明する。このようにして、今後の研究を鋭意に推進していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
一部の試薬について在庫切れのため、年度内に納品が間に合わなかったため、次年度での支払いが必要であり、次年度使用額が生じた。
|