研究課題/領域番号 |
22K12411
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
中島 晶 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (20419237)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 難燃剤 / 脳神経系 / 内分泌かく乱物質 |
研究実績の概要 |
難燃剤の代表的なものとして臭素系難燃剤があげられるが、いくつかの臭素系難燃剤では内分泌かく乱作用を始めとして、脳神経系への影響を含む様々な毒性が報告されており、近年まで使用されていた代表的な臭素系難燃剤であるヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)は2015年に、デカブロモジフェニルエーテル(decaBDE)は2017年に残留性有機汚染物資に関するストックホルム条約の附属書A(廃絶)に追加され、原則製造および使用が禁止された。その結果、最近の国際的な動向として、使用が禁止されたHBCDやdecaBDE の代替物質として、有機リン系難燃剤の使用が急増していることが報告されている。そこで、9種類の有機リン系難燃剤について、神経モデル細胞であるPC12細胞に有機リン系難燃剤を処置し、CCK-8アッセイによる細胞生存率を指標とした細胞毒性に関するスクリーニングを実施した。その結果、Isopropylated phenol phosphate (IPP) が臭素系難燃剤であるテトラブロモビスフェノールA (TBBPA)やHBCDと同程度の神経細胞毒性を有することを見出した。さらに、IPPをPC12細胞に処置すると神経細胞死につながる小胞体ストレスや酸化ストレス、プログラム細胞死の1つであるネクロトーシスの実行因子のmRNA発現を顕著に増加させることを見出した。以上の結果より、有機リン系難燃剤であるIPPはPC12細胞において小胞体ストレス応答や酸化ストレス応答を誘導し、神経毒性を引き起こすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
難燃剤であるTBBPA及びHBCDにより引き起こされる神経毒性に、小胞体ストレス及びネクロトーシスシグナルの活性化が関与することをはじめて明らかにした。さらに、近年使用量が急増している有機リン系難燃剤であるIPPが、PC12細胞において小胞体ストレス、酸化ストレス及びネクロトーシスシグナルの活性化を誘導し、神経毒性を引き起こすことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後はマウスを用いたin vivoの実験系において、臭素系難燃剤および有機リン系難燃剤が脳神経系に及ぼす影響を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスを用いた動物実験を実施しなかったため、次年度使用が生じた。令和6年度にマウスを用いたin vivoの実験を行う予定である。
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