研究課題/領域番号 |
22K12412
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
田上 瑠美 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 助教 (60767226)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 水圏環境 / 表層水 / 水生生物 / 化学物質 / 生物濃縮性 / 環境化学 / 網羅分析 |
研究実績の概要 |
高極性から中極性のイオン性および中性の化学物質(親油性の尺度であるオクタノール/水分配係数の対数値:0-6)を網羅的にスクリーニングできる分析法の確立に取り組んだ。分析機器は、液体クロマトグラフ-四重極飛行時間型質量分析計(LC-QToF-MS/MS, Sciex X500R)を使用した。抽出溶媒および固相カートリッジを最適化することにより、表層水試料と水生生物試料に残留する医薬品類、除菌剤のトリクロサンとトリクロカルバン、防腐剤のパラベン類、ベンゾフェノン類、ビスフェノール類、アルキルフェノール類の高感度一斉分析法の確立に成功した。分析法の概要を以下に示す。 表層水試料:ガラス繊維ろ紙(Whatman, GF/F)で濾過した試料20 mLに内部標準物質を添加後、MTBEとメタノールでコンディショニング済みのOasis HLB Plus Light Cartridge(30 mg, Waters)に通水した。5%メタノール含有超純水3 mLでカートリッジを洗浄後、メタノール/MTBE(7:3,v/v)3 mLで対象物質を溶出させた。溶出液を窒素気流下で0.3 mLまで濃縮し、超純水を添加して全量1 mLにした後、シリンジフィルターでろ過して、最終試料溶液とした。 水生生物試料:凍結乾燥の後、乾燥重量10 mg に内部標準物質および酢酸-酢酸アンモニウム緩衝液(pH = 4)、メタノール/アセトニトリル/超純水(1:1:2, v/v/v)を添加し、超音波抽出後、遠心分離した。得られた上澄みをHybridSPE-Phospholipid Ultraカートリッジに通液し、リン脂質とタンパク質を除去した。試料精製液を窒素気流下で0.6 mLまで濃縮し、超純水を添加して全量2 mLにした後、シリンジフィルターでろ過して、最終試料溶液とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
表層水試料と水生生物試料に残留する医薬品類、除菌剤のトリクロサンとトリクロカルバン、防腐剤のパラベン類、ベンゾフェノン類、ビスフェノール類、アルキルフェノール類の高感度一斉分析法の確立に成功したものの、農薬類254種の分析にも適用可能であるかの検証まで到達できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度、医薬品類、除菌剤のトリクロサンとトリクロカルバン、防腐剤のパラベン類、ベンゾフェノン類、ビスフェノール類、アルキルフェノール類を対象に確立した分析法が、農薬類254種の分析にも適用可能であるか検証する。 確立した分析法を、日本および東南アジア諸国で採集した環境水および水生生物(魚類・エビ類・貝類など)の試料に適用する。ターゲット分析では、標準品と照合可能な上記の化合物約400種について、各試料における存在の有無を調査(定性)するとともに濃度を決定(定量)、そして残留実態を比較解析することにより、水生生物に濃縮されやすい未規制化学物質の特徴を体系的に整理する。 野外環境における生物濃縮係数が500以上と推定された未規制化学物質について、生物濃縮性の詳細調査として、魚類肝S9画分を用いたin vitro代謝試験、魚類の血しょうを用いたin vitro血しょうタンパク結合試験、試験魚を用いたin vivo生物濃縮度試験を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では旅費10万円を計上していたが、家庭の事情により、国内学会に参加できなかったため、旅費が発生しなかった。また、科研費の若手研究が最終年度であり、共通で使用する試薬類や消耗品の購入費は若手研究から支出したため。
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