研究実績の概要 |
前年度の検討により、高感度のアンモニアセンシングにおいて、CuBr, シリカナノコロイドー有機高分子複合系吸着材では、気相中水分は非常に大きな影響を及ぼす外乱要因であることを把握している。QCM応答に及ぼす水分影響を半速度論的に検討するため、今年度作製したミスト噴霧蒸発装置を用いて水蒸気ミスト流への接触・遮断プロセスにおけるQCM応答挙動を観測した。マイクロオーダーサイズ以下のミスト流の接触により金電極を有するQCMは負荷増加の大きな応答(共振周波数の低下)を誘発するものの、マイクロサイズオーダー以下のミストであれば気流の遮断により素早く電極表面から蒸発・消失して影響を解消できることを把握した。一方、金電極以外のAl, Sn, C電極では、この応答が不安定であり、バックグラウンドベースラインの不安定要因になると考えられた。。吸着材材料の化学的安定性について検討するため、研究協力者より電極金属種の異なる種々のQCMの提供を受けて、この電極上でのCuBrの色の経時変化を観察することにより化学的安定性に関する調査を実施した。その結果QCMの電極条件に応じてCuBrの化学的な安定環境が存在するというとても重要な現象を把握した。一方で、多くの電極条件ではCuBrは非常に不安定であり、化学的に劣化してしまうことを把握した。この事実は既存の文献では確認できなかったことであり、既存の同材料を有するセンサの耐久性にも問題がある可能性を示唆した。化学的に安定なCuBrを電極上に作成する手法としてCuBrナノ粒子を電極上で合成しながら沈着させる手法を取り上げ、電極上の液相反応によりCuBrナノ粒子を生成させることができた。今後、これらの電極についてガス吸着応答ならびに水分共存下での安定性の評価を検討する。
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