研究課題/領域番号 |
22K12430
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
藤井 克彦 工学院大学, 先進工学部, 教授 (30333660)
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研究分担者 |
杉山 健二郎 工学院大学, 先進工学部, 講師 (90449041)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 消化汚泥 |
研究実績の概要 |
下水汚泥は我が国の主要な産業廃棄物であり、その減容手段として嫌気消化法が普及しているが、それでも減容率は30%にとどまり、残り70%は『これ以上は生分解が進みにくい残渣(消化汚泥)』として残存する。最近になって研究代表者は、この消化汚泥を基質としてバイオガスを発酵生産できる嫌気菌叢を取得した。他方、研究代表者は10% 二酸化炭素(CO2)を通気したアルカリ性培養液で増殖する微細藻類も保有しているが、CO2はアルカリ性の水に溶解するので、アルカリpHで生育できる微細藻類の培養液にバイオガスを通すことで、ガス中のCO2の固定化が期待できる。そこで本研究では、消化汚泥発酵菌叢と微細藻類を併用することで、消化汚泥からバイオガスを追加生産し、さらにバイオガスからCO2を除去できる技術の基盤研究を行う。 今年度は、汚泥発酵菌叢がどのような微生物種から構成されているのかを属種レベルで明らかにした。解析の結果、菌叢には、消化汚泥の加水分解と酸生成を担う真正細菌としてEnterobacter属がClostridium属が主要メンバーとして、また、Pseudomonas属も存在することがわかった。メタン生成アーキアは,Methanobacterium属とMethanosarcina属に加え、系統分類学的位置が定まっていないアーキアの一群も存在していた。菌叢には糸状菌の存在も確認された.糸状菌は前述のPseudomonas属と同様に一般には好気性微生物であるが、継代培養を繰り返しても淘汰されずに安定して菌叢内に存在し続けていることから、硝酸呼吸等で菌叢内の酸化還元電位の低下(嫌気化)に貢献していると推察された。さらに、アルカリpH下で高濃度CO2に適応した野生藻類10株の最適生育条件も検討した。実験の結果、CO2が炭酸塩として溶解しやすいpH10-11程度でも良好に生育できる株を4株特定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の実験で、汚泥分解菌叢の主要メンバーの特定ができたこと、さらに、pH10以上の強アルカリでCO2を固定化して生育できる有望藻類株も絞り込むことができた。次年度の研究進展につながると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当初研究計画に従い、「汚泥分解菌叢の汚泥分解メカニズムの解明」および「有望野生藻類株の系統解析」に着手する。
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