研究課題/領域番号 |
22K12455
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
伊藤 拓哉 沼津工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (90632505)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 木質バイオマス / 直接液化 / 溶媒極性 / 加水分解 |
研究実績の概要 |
当該年の目標は、木質バイオマスの直接液化における軽油-アルカリ水溶液混合溶媒中での木材の液化機構を解明することであった。 そこで、種々の条件で混合溶媒中にて木材を液化し、液化生成物の解析を行った。具体的には150 μmに粉砕した木材と溶媒として軽油およびNaOH水溶液を5:1の割合で混合した混合溶媒を電磁誘導撹拌式オートクレーブへ投入した後、窒素ガスを4 MPaまで充填し、250 - 350 ℃で,0 - 60分間温度を保持して反応させた。反応性生物についてはガスに対してはGC-TCD、FIDにて組成分析、液化油に対してはGC-MSによる構成成分の同定、固体残渣に対しては元素分析およびFT-IRによる官能基分析を行った。 その結果、反応初期ではセルロースのみが分解され液化油が生成し、反応が進行して行くとリグニンの分解が始まり、水溶性の極性成分が生成してくることがわかった。また、反応終期では熱分解によって生成したCOが水と水性ガスシフト反応(CO + H2O → H2 + CO2)を生起してH2を生成し、熱分解ラジカルに水素を供与することで,分解物同士の化合が抑制され、残渣の生成が抑制されると考えられる。 また、針葉樹と広葉樹で反応傾向が若干異なることが判明した。針葉樹と広葉樹の構成成分に注目すると主にヘミセルロースの組成が異なることが知られている。そこで、試薬を用いて広葉樹モデルを調整して液化したところ実際の広葉樹に近い反応傾向を示したことから、針葉樹と広葉樹で反応傾向の差異はヘミセルロースの組成によることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するために本年度検討すべき項目は木質バイオマスの直接液化における軽油-アルカリ水溶液混合溶媒中での木材液化機構の解明であった。これに関して種々の反応条件化で得られた生成物を分析することで、各反応段階で生起している反応について明らかに出来たことから、おおむね順調に研究が進展していると言える。さらにその過程で、反応温度、保持時間、反応初圧、軽油-アルカリ水溶液比、アルカリ種等が液化反応に及ぼす影響についても概ね把握出来たことから次年度以降取り組む予定である軽油-有機溶媒混合溶媒系における木質バイオマスの直接液化機構の解明や混合溶媒系における溶媒循環に関する検討の基礎データを取ることが出来た。 また、当初予定していなかった広葉樹と針葉樹の液化傾向の差異についても簡単ではあるが、検討することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の目標は軽油-極性有機溶媒系における木質バイオマス液化機構の解明である。これまでは極性溶媒としてアルカリ水溶液を用いていたが、次年度は極性溶媒として有機溶媒を用いて同様の検討をすすめる。有機溶媒の場合極性にはプロトン性極性と非プロトン性極性があり、溶媒種の選定が重要になると考えられる。溶媒循環を考慮し、木質バイオマスから生成するプロトン性の極性をもつアルコール(プロパノール、ベンジルアルコール等)や非プロトン性の極性を持つメトキシベンゼン(アニソール等)類等が想定される。
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次年度使用額が生じた理由 |
200円と少額なため用途がなかった。次年度の実験消耗品費の一部として使用予定である。
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