研究課題/領域番号 |
22K12475
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
奥村 哲也 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (10380817)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 浸透膜 / 濃度分極 / ファウリング |
研究実績の概要 |
現状の浸透膜モジュールでは,浸透膜が本来持っている浸透性能の1/3程度しか発揮されていない.本研究では,透水性能を低減させる大きな要因である塩分濃度分極とファウリングをコンピュータ上で再現できる計算モデルを開発し,それを用いて浸透量低下のメカニズムとその特性を解明し,本来の膜性能を発揮する方法とその性能を持続する方法の開発を行うことを目指す. 2023年度は,ファウリングや濃度分極低減法を検討するにあたって,これらの現象をコンピュータ上でシミュレーションを行うことができる,高密度比の多成分系を扱うことができるモデル・プログラムの開発を行った. 気泡と水という密度比が1000の物質を安定して計算することができるシミュレーションプログラムを開発し,水中および浸透膜表面近傍のファウラントを気泡を用いて捕集する方法を検討した.その結果,水との接触角が小さいファウラントは水中では気泡表面に吸着しやすいため,疎水性のファウラントは気泡を用いて除去しやすいこと,気泡の浮上速度がファウラントの吸着量に影響を及ぼすことが分かった. 浸透膜(平膜)での正浸透をモデル化したシミュレーションプログラムを開発し,塩水側の膜表面におけるイオン濃度分布および水の浸透量について検討した.塩水の流入速度が大きい場合,濃度分極層が薄くなるため浸透量が多くなることがわかった. また,中空糸の計算モデルを用いて流入速度が周期的に変化する非定常流れが浸透量に及ぼす影響について検討した.その結果,流入速度の平均値が同じであっても速度の変化の仕方によって浸透量が異なることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した内容に沿って大きな問題もなく進んでいるため,「おおむね順調に進展している.」とした.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,浸透膜表面近傍の濃度分極およびファウリングを低減する方法について検討する.濃度分極・ファウリングの解消法を開発するため,計算モデルの構築および検討する課題,計算すべき条件等が大幅に増える.従って,本年度では,分子シミュレーションワークステーションを増設することにより計算能力を増大して課題に挑む. (1)気泡の計算モデルを改良し,水中および膜表面近傍における気泡を用いたファウラント捕集の効果について検討する. (2)正浸透及び逆浸透において浸透膜の両面を同時に解析するモデルを開発し,膜の表面形状や水の流れが濃度分極の形成に及ぼす影響について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
半導体不足および円安等の影響により,購入を予定していたワークステーションの金額及び納期が大幅に変わってしまったため2023年度の購入を見送った.また,2023年度は計算モデルの開発とプログラムの作成に注力し,2024年度に新しいワークステーションを購入した方がより高性能の計算機を導入できると判断した. 2024年度は半導体の供給が戻りつつあるので,スペックを見直した新しいワークステーションを購入する予定である.
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