研究課題/領域番号 |
22K12508
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
吉弘 憲介 桃山学院大学, 経済学部, 教授 (50537628)
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研究分担者 |
早尻 正宏 北海学園大学, 経済学部, 教授 (50466637)
山川 俊和 大阪産業大学, 経済学部, 教授 (70572395)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 森林政策 / 林業労働 / 森林環境税(同譲与税) |
研究実績の概要 |
本研究は林業と地域経済の関係を、1)地域の自然資源の持続可能な利用、2)地域社会を雇用と消費によって支える労働主体、3)上記1)2)を支える財政制度に注目して明らかにしていくことを目的にしている。周知の通り、戦後に植林を行った日本の森林資源は伐採に適した時期に入っているが、林業の労働供給の深刻な不足から、伐採やその後の植林及び育林管理について多くの課題を抱えている。その背景には、低賃金労働が定着してしまっている林業労働の歴史的課題、人口減少の影響をより深刻にうける中山間地域の地域社会の課題、木材の「生産」に傾斜してきた森林政策という形がもつ政策上の課題が、それぞれ重層的に結びついている。そのために、本研究は森林政策と林業労働、環境経済学、地方財政論のそれぞれの専門家による学際的な研究として進めることとなっている。 令和4年度は、研究開始の初年となる。最初に、6月24日-26日にかけて、具体的な調査をプランニングするためのミーティングを行った。この研究会において、研究における具体的な調査先についての検討を行った。また、吉弘・山川から科研に関連した共同研究「再生可能エネルギー施設立地の政治経済学:日本の木質バイオマス発電を中心に」の中間報告を行った。同研究は、その後実績報告に上げているように10月の経済理論学会で報告し、大阪公立大学紀要に公開した。 ミーティングにおける調査計画に基づき、令和4年11月7日には林野庁において森林環境譲与税の譲与基準と使途との関係に関するヒアリング調査を行った。同調査により、令和5年度以降の調査対象先の選定等について示唆を得ることができた。同年12月16日には高知県梼原町、令和5年2月17日には山口県周南市において林業と再エネとの政策上の関係についての調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初対象としていた地域への調査は、必ずしも予定通り進んでいないが、他の特徴的地域へのヒアリング調査を継続して実施している。令和4年度には林業と再エネの関係について特徴的な地域として高知県梼原町におけるグリッド整備と木質バイオマス発電による取組について調査を行った。また、山口県周南市ではコンビナート地域における脱炭素の取組として、近隣森林地域の早生樹植林事業の実態と現地視察を行った。 令和5年度は本研究の共同研究者である早尻正宏氏が在外研究としてスウェーデンに出ているため、海外の森林政策と林業労働の関係について調査を進める予定である。国内にいる二名の研究者は、引き続き国内の事例研究とデータ分析を進める予定である。すでに、森林環境譲与税については決算統計を通じて1741市区町村の2019年度から2021年度までのデータセットを組んでおり、令和5年度6月の学会において計量的手法に基づいた中間的な報告を行う予定となっている。また、昨年度に林野庁ヒアリングにおいて得られた情報をもとに、栃木県、岐阜県等への調査を準備しており、研究は概ね順調に推移しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、森林環境譲与税の使途に関するデータ分析と、特徴的自治体や地域における森林政策、林業労働、再生可能エネルギーに関して参考となる市町村へのヒアリング調査を進めていく。令和4年に行った林野庁調査を参考に、栃木県矢板市、徳島県那賀町、静岡県浜松市、岐阜県東白川村、山形県酒田市といった自治体への調査依頼を進めていく。学期等の関係から、大学の夏季休暇期間を中心に最大3自治体を目標に調査を進めていく予定である。同時に、森林環境譲与税のデータ分析に関して、ヒアリング自治体への調査をもとに量的に分析可能な要素についても検討を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本事業における支出については、概ね正当に支出されたものと理解しているが、共同調査予定のメンバーにおいて一部、所属大学の移動に伴って年度間での執行残が生じている。以降は問題は生じないと考えている。
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