研究課題/領域番号 |
22K12535
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
網中 昭世 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センターアフリカ研究グループ, 研究員 (20512677)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 国家社会関係 / アフリカ / 国家 / 文化 / 文化政策 / モザンビーク / 移民 / 無形文化遺産 |
研究実績の概要 |
1年目の2022年度は関連研究者との研究交流を目的に研究課題の「旗印」を立てるため、積極的に国内外での発表を行った。5月にカナダ・アフリカ学会(Canadian Association for African Studies: CAAS)、7月に日本・南アフリカ大学(the South Africa-Japan University, SAJU)フォーラム、12月に日本国際政治学会の「政治と音楽」フォーラム組織者の定例研究会で研究報告を行った。 6月~7月に実施した資料調査の結果、人類学的史料映像(Encyclopedia Cinematographica:EC)フィルム・コレクションの中にアパルトヘイト時代の1960年代末に南アフリカにおけるモザンビーク・ショピ民族の芸能の様子を捉えたフィルムを特定した。ECフィルムのコレクションは世界に数点しか確認されていないが、そのうちの1点は日本にあり、さらにそのデジタル版が国立民族学博物館に所蔵されており、所定の手続きを経て視聴・研究目的で利用可能であることを確認した。 8月には、モザンビーク国立歴史公文書館において1970年代から1980年代までの史料調査を行い、またモザンビーク農村部において現地協力者と協働でフィールドワークを行い、研究対象である民族芸能実践に関する調査を行った。この調査では1940年代後半から1990年代まで南アフリカで演奏活動を行っていた代表的奏者の楽団で共演していた古老らのオーラル・ヒストリーを聞き取ったほか、その子・孫世代の実践の様子を記録した。 11月には、協力者であるモザンビークの民族音楽研究家・奏者を招聘し、国立民族学博物館所蔵のECフィルムを視聴・分析した。また招聘者とともに沖縄における伝統芸能実践の視察を行い、東アジアと南部アフリカの比較の視点を共有した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現地の協力者による機材提供により、当初予定していた聞き取り調査とその録音のみならず、民族芸能の実践の様子を高品質の音源・映像で記録するなど、農村調査で有益な調査を行うことができた。これらの音源・資料映像は分析や今後の研究成果のアウトリーチのみならず、現地の実践者にとっても有益である。 ECフィルムの所在とアクセス、さらには分析のみならずアウトリーチへの利用可能性が確認できたことにより、当初予定していた聞き取りと文書史料に加え、歴史的な資料映像という多様なデータを用いることが可能となった。 こうした調査研究上のデータを協力者とともにアウトリーチに利用し、日本側・研究対象地域に還元するという可能性が開けたことにより、研究協力者の協力動機も高まり、研究の推進のための好循環が生まれている。
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降は、1年目にモザンビーク国立歴史公文書館において収集した1970年代から1980年代までの史料に続き、1990年代から2000年代までの史料収集を行い、それらの分析を行う。また1年目のモザンビークでの農村調査時に実施した聞き取り調査の記録を分析したうえで、その補足調査を行う。 また、日本側では国立民族学博物館の所蔵するECフィルを研究協力者とともに継続して視聴・分析すると同時にアウトリーチ時の利用についても具体的に検討する。なお1年目に視聴・分析のうえ、アウトリーチでの利用が許可されたものについては2年目の学会発表ならびに一般向けのアウトリーチで利用する。 2年目後半は成果発表に向けたデータの整理と、文書・映像といった多様な質のデータを盛り込んだ成果発表が可能となる媒体を模索しつつ、投稿を念頭においた原稿執筆に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の使用については、特に旅費の大部分を占める国際線航空券代が全般的に高騰傾向にあったため、年度前半には航空券代予算を十分に確保しておく必要があった。これらの価格高騰は、Covid-19感染症の拡大期の航空便の削減やロシアによるウクライナ侵攻に伴う燃料価格の高騰などを反映したものであり、不可抗力であった。結果的に次年度使用が生じたものは次年度の資料購入に当てる。
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