研究課題/領域番号 |
22K12542
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
荒木 茂 京都大学, 地球環境学堂, 研究員 (00158734)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 選択伐採 / 熱帯林の保護 / 林業の持続性 / 住民主体の自然資源管理 / 自然と開発の融合 |
研究実績の概要 |
「選択伐採」とは従来、林業の分野で「択伐」として表されていた概念であるが、それを天然林に用いられて現在、「持続性のある択伐」ということが国際林業の分野で提唱されている。熱帯林の消失速度が一向に衰えないのは、先進国の木材需要と、熱帯諸国の、資源に依存した経済開発の願望が合致したものであり、その狭間のなかで、違法な「違法伐採」がまかり通っているためである。 本研究の目的は第一に、熱帯林の伐採が、「選択伐採」という一見、林業経営としての森林の持続性が想定されていることにメスをいれ、より科学的見地に立った熱帯林の予測と、その対策のためのエヴィデンスを提出することにある。さらに「選択伐採」のアプローチを、サバンナ地帯のウッドランドに適用することによって、気候植生の違いが引き起こす森林破壊の社会、経済的影響を比較検討し、アフリカ熱帯林における「自然と開発」との融合モデルを提出することを第二の目的とする。
カメルーン東部州における衛星画像(Landsat5、7)、高精度衛星画像(Worldview)を用いて、退化した森林における木材搬出路の検出およびトレースをおこない、カメルーンにおける調査候補地の選出をおこなった。高精度衛星画像においては、伐採樹種の推定もある程度可能であるので、地域における「選択伐採」の歴史の復元と、土地利用の現状とを対比させることによって、森林の未来予測が可能となる。カメルーンの調査地は、ベルトア、グリベ、ムバランのコミュニティフォーレストを予定しており、来年度における現地調査に備えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者は、1か月の入院治療と、その後の静養のため、令和4年度に予定されていた、カメルーンにおける現地調査を行なうことが不可能となり、令和5年度に延期された。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度:1.カメルーン東部州ベルトア(調査地1)、グリベ(調査地2)のコミュニティ・フォレストにおいて、選択伐採地のバイオマス、土壌、森林経営の調査を行ない、持続性のある「選択伐採」期間がどのくらいに設定されているのかを検討する。試料をもちかえり、土壌有機物およびICPによる化学全分析、およびランドザット7を用いた、土地利用、土地区分の経時的変化の解析を行なう。 令和5年度:2.ザンビア北部州ムピカ(調査地3)、タンザニア南部州ムビンガ(調査4)において、焼畑耕作地域、薪炭生産林のミオンボ林の再生状況と土壌調査を行ない、日本国内で前年度と同様の解析を行なう。 令和6年度:カメルーンの調査地を再訪し、コミュニティ・フォレストの再生マネジメントに関する現地検討会を行なう(標準的には、胸高直径55㎝以上の樹木で、ギャップの休閑期間を35年以上設け、材の収量は30m3/ha以下という基準の検討)。 以上の結果を、住民主体の自然資源管理にもとづいた、具体的な「自然と開発」との融合モデルを提出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が、1か月の入院治療と、その後の静養を余儀なくされ、令和4年度に予定されていたカメルーンの現地調査調査が、令和5年度に延期されて行われるよう、予定変更を行なったため。
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