研究課題/領域番号 |
22K12544
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山本 雅史 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (00305161)
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研究分担者 |
山本 宗立 鹿児島大学, 総合科学域共同学系, 准教授 (20528989)
坂尾 こず枝 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (40713285)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | カンキツ / シィクワーサー / 遺伝資源 / 文化資源 / 南西諸島 / 機能性 |
研究実績の概要 |
令和5年度には、喜界島および沖縄本島で現地調査を実施するとともに、在来カンキツ類の遺伝資源としての特性や機能性成分解明に関する研究を進めた。 喜界島においては、在来カンキツを利用した6次産業の現状を調査するとともに、本研究の成果を提供することによるその一層の進展を図った。また、果実に含有する機能性成分の含量・組成に及ぼす環境条件の影響解明のため、現地果実を採取してその成分分析を実施している。 沖縄本島においては主に南西諸島在来カンキツの独自性および多様性解明のための現地調査を実施した。現地で自生または栽培されている多数の在来カンキツ果実を採取した。これらは果実特性の調査だけでなく、果皮からDNAを抽出することによって遺伝子レベルでの独自性・多様性の解明の材料として用いる。 また、鹿児島大学農学部で保存している多数の南西諸島在来カンキツの形態的特性を調査した。花および果実特性には系統間差異が存在し、現在までに明らかとした類縁関係と密接に関係していることが確認できた。同一環境条件で栽培されている植物を供試したため、特性の差異は遺伝的条件の違いによるものと考えられた。このようなデータは今までほとんど無かったため、貴重な情報を入手することができた。 さらに、在来カンキツの機能性解明では、主に肥満・高血糖の予防効果を様々な手法を用いて検討した。その結果、喜界島在来の喜界ミカンに抗肥満効果があることがわかった、さらに、鹿児島市内で生産した果実よりも喜界島産の果実の方が抗肥満効果が高かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
喜界島で現地調査を実施した。現地での利用について調査するだけでなく、本研究の成果の利用による6次産業のさらなる発展の可能性が展開できた。 沖縄本島で現地調査を実施し、重要な遺伝資源の分布を確認し調査することができた。 保存・採取したシィクワーサー類の多様性および類縁関係をDNA分析によって解明しただけでなく、花および果実特性を調査した。これらの結果、形態的特性は遺伝的類縁関係と密接に関係していることが確認できた。 在来カンキツ果実の機能性を検定した結果、喜界島在来の喜界ミカンが高い機能性を備えることを明らかにした。 以上は、令和5年度研究計画に沿っており、これらの点から「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究をさらに進め、その深化を図るとともに、成果を公表する。 現地における在来カンキツ遺伝資源の生育および利用法調査を薩南諸島および琉球諸島で実施する。これによって、南西諸島におけるシィクワーサーなど在来カンキツの分布の特徴解明を一層進展させることが可能となる。また、現地調査においては地域における利用についての情報を入手する。 また、これらのDNA分析も推進する。分析するDNA領域を拡大し、現地調査で収集した多数の系統も追加することによって、令和5年度までに得られた結果以上の精度で、シィクワーサー類の多様性および類縁関係を解明できるものと考えている。 さらに機能性研究では、成分分析、細胞実験および動物実験を進める。令和5年度までに示したメラニン抑制、抗肥満効果および血糖値抑制効果については、細胞実験を進めるとともに機器分析を併用することによって、効力の高い成分を探索する。新たに、細胞実験によって在来カンキツ果実の抗ガン作用についても検討する。 また、研究期間の3か年で得られた成果を取りまとめて小冊子を作成するとともに、奄美群島において在来カンキツ利用が最も進んでいる喜界島において在来カンキツの特長に関するシンポジウムを開催し、得られた成果を一般市民に公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定した現地調査のうち、台風襲来のため見送らざるを得ないものがあった。また、研究代表者と分担者の日程調整が難航し、研究関係者全員での調査ができなかった。そのため、当初予定よりも執行する旅費が少なくなった。 また、研究技術の進展によって、当初予定した手法以外の実験技術を用いたことにより、一部高価な試薬を使用する必要が無くなった。また、本研究で用いる分析機器についても、新たに購入することなく、借用するなど節約に努めた。このため、物品費の使用も予定より少なくなった。 次年度は、積極的に学会に参加し、本研究に関する情報収集を一層進める。現地調査も複数の地域で複数回実施する。DNA分析関連消耗品や機能性研究における成分分析・細胞実験・動物実験用の消耗品を購入する。
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