研究課題/領域番号 |
22K12568
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
藤井 千江美 高知大学, 教育研究部医療学系看護学部門, 助教 (80888511)
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研究分担者 |
水元 芳 中村学園大学, 栄養科学部, 教授 (20581630)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 栄養改善 / 母子保健 / モリンガ / アフリカ農村部 / 持続可能なしくみ作り / プライマリヘルスケア |
研究実績の概要 |
本研究のベースとなる持続可能な栄養改善しくみ作りの活動として、2022年4月から12か所の小学校エリアに存在する母親支援グループも対象に含め、小学校と協働してモリンガと野菜農園の運営管理を行ってきた。そしてそこで収穫されたモリンガ生葉やモリンガ葉粉末を加えた学校給食の料理講習会を行い、現在は週2回曜日を決めて提供をしている。 しかし、特に乾季の11月~4月の半年間は雨が降らず、また水遣りの大変さもあり、モリンガ農園のモリンガの生育状況が悪いことが課題となった。そこで新たに2023年8月から、12か所の小学校の児童全員が自宅で1本のマイ・モリンガを育てる活動に取り組み始めた。そして各児童が自宅から持ち寄るモリンガ葉も学校給食に提供することでモリンガ給食の提供回数を増やしたり、また各家庭でもモリンガ葉が料理に使用されるしくみを作ることを目標にしている。 本研究の目的は、活動で取り組んでいるしくみ作りの効果と、学校だけではなく地域の母親支援グループも巻き込むことで、母や地域女性の栄養意識を高め行動変容につながる波及効果が得られるかを検証することである。そこで2023年9月から10月にかけてシエラレオネを訪れ、2022年9月から年2回4か所の小学校で実施している身体測定に加えて、新たに12か所の4年生の児童(計543名)と児童の保護者をランダムに各10名を選び(計120名)、インタビュー調査を実施した。このインタビュー調査は、2024年10月にも再度行い、マイ・モリンガのしくみを取り入れることで、1年間でどれくらいの栄養に関する知識と行動変容が、児童と地域女性に見られるかを比較し検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要にも説明した通り、本研究のベースとなる12か所の小学校でのモリンガの生育状況が、特に乾季悪いことが主な理由である。その為、新たに児童の自宅で1本のマイ・モリンガを育てるしくみを導入した。このしくみの利点は、水遣りが非常に容易になることである。また、一人の児童や家族が1本のモリンガの木を育てる為、責任の所在も明らかなことである。2024年3月にシエラレオネに渡航し、ランダムに児童宅を訪れたが、各児童が水遣りや家畜侵入防止フェンスを工夫しており、モリンガの成長の差はあったが、着実に各児童宅で成長をしていた。マイ・モリンガで採取した葉を児童が学校に持ち寄ることで、週2回から5回にモリンガ葉・粉末が入った学校給食を提供できるしくみを作っていき、本研究の目的に向けて、更に取り組んでいくことを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の2回の現地調査の結果、現状の継続では本研究の目標となるモリンガ葉の提供量の実現見通しは厳しく、研究のベースとなる活動に関して、マイ・モリンガに加えて、2024年4月から下記の対応策を実施していく。 現在の活動の継続と同時に、12か所の小学校で今後の成果が期待できる7か所の小学校を選び、既存のモリンガと野菜農園の一部を改善して、マイ・クラス・モリンガスクールガーデンを導入する。 この方法は、各学校の3年生から6年生の4学年の児童と学年担当教員、そして母親支援グループからの各2名が協働して、マイ・クラス・モリンガスクールガーデンの運営管理を行う。今までの各校2名の担当教員は、全体を包括する。そしてモリンガと共存でき、よく食材に利用される唐辛子とナスビをモリンガと一緒に植える。この方法に変更するメリットは、各校2名の担当教員だけでなく全教員が運営に関わり、また各学年の児童も全員、曜日別に水遣り当番を決め、週末や休暇中は2名の母親支援グループのメンバーが担当する。そのため、チームワークの形成と責任の所在が明確になることである。 また、母親支援グループから地域女性に向けてのモリンガ料理講習会やモリンガ粉末製造・貯蔵研修の場をより多く提供することで、地域女性たちの食と栄養に関する知識や行動変容への波及を期待したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
シエラレオネの小学校では、身体測定は実施しておらず、地元NGOスタッフと教員が身体測定の正確な技術を習得するには、多大な時間が必要であることが分かった。2022年度に引き続き、身体測定の研修は実施せずに、藤井が直接実施しながら指導していく方法で行った。またブルキナファソからの外部講師に関する費用は、本研究のベースとなる活動に対する助成金から出すかたちをとった。 そのため使用しなかった費用は、最終年度となる次年度のため、日本国際保健医療学会と国際ボランティア学会での口頭発表に伴う旅費、そしてTropical Medicine and Healthのジャーナル投稿費用と英文校正費用、それに向けての共同研究者との打ち合わせに伴う国内旅費の一部として使用していく計画である。
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